道路管理者は道路法の規定によって道路を管理する者です。 道路法が道路管理者に認めた特殊な権能である道路管理権に基づいて道路を造ったり管理をして道路を一般交通の用に供するとともに、必要に応じて道路の通行禁止や制限などもしています。
〔目次〕
道路管理者
道路法の規定によって道路法の道路を管理する者を道路管理者といい、国土交通大臣、都道府県(知事)、市町村(長)のいずれかになります(道路法 第18条)。
道路の種類毎の道路管理者
高速道路番号
(118の3)
- 国土交通大臣(高速自動車国道法 第6条)
(独立行政法人日本高速道路保有・債権返済機構と高速道路株式会社は国土交通大臣の権限の一部を代行(道路整備特別措置法 第8条、第9条))
国道番号
(118-A)
- 指定区間内は、国土交通大臣(道路法 第13条第1項、一般国道の指定区間を指定する政令)
- 指定区間外は、原則、都道府県知事(道路法 第13条第1項)
- 指定市の区域内の指定区間外の国道は、指定市の長(道路法 第17条第1項)
- 指定市以外の市の区域内の指定区間外の国道で、都道府県と協議して同意を得たものは当該市の長(道路法 第17条第2項)
指定区間外国道の管理は地方自治法の法定受託事務とされています(道路法 第97条、地方自治法 第2条第9号第1号、地方自治法 別表第一)。
都道府県道番号
(118の2-A)
- 原則、都道府県(道路法 第15条)
- 指定市の区域内の都道府県道は、指定市(道路法 第17条第1項)
- 指定市以外の市又は町村の区域内の都道府県道について、都道府県と協議して同意を得たものは当該市又は町村(道路法 第17条第2項、第3項)
- 市町村(道路法 第16条)
- 東京都の特別区の区域内の市町村道に相当する道路は当該特別区(地方自治法 第283条第2項)
種類が異なる道路が重複する場合、道路法は、国道と都道府県道や市町村道が重複するときは国道の規定が、都道府県道と市町村道が重複するときは都道府県道の規定が適用されます(道路法 第11条)。
災害復旧や修繕代行、地方分権などの観点から、道路法などに様々な場合に権限の代行や委任ができることが定められています。 このため、実際に道路管理を行っている者が、道路法で定められた道路管理者とは異なっている場合があります。
- 詳細 道路管理者の特例や代行等
道路の管理と道路管理権
道路法では、道路管理者が行う道路の管理を、大きく分けて道路の新設、改築、維持、修繕、災害復旧、その他の管理としています(道路法 第12条、第13条)。
道路の管理は、一般交通の用に供するという道路本来の目的を達成するために法律が道路管理者に認めた特殊な権能である道路管理権に基づいて行われます。 道路では道路管理権とともに、交通の安全を図るために警察により交通警察権も行使されます。
道路管理権は、道路の効用の発揮を担保するための公権的側面と、敷地の権原という私権的側面とを有する包括的な権能と考えられています 1) 。 この道路管理権が行使される範囲は、道路区域と沿道区域、道路予定地ですが、それ以外の場所であっても、土地の立入りなどの道路管理権が行使される場合があります 2) 。 道路管理者が行っていることは、上述の公法上の行為と、道路用地の売買契約などの私法上の行為、道路の新設工事などの単なる事実行為の三種に分けられます 2) 。
1) 道路法令研究会編著、改訂6版 道路法解説、大成出版社、2023、P.292
2) 道路法令研究会編著、道路管理の手引き、大成出版社、2014、P.123、P.126
新設、改築などの言葉の意味 (道路法で使われる言葉)
〇 道路法 第12条
- 路線の指定や認定、変更に伴い、新たに道路を築造する場合
- 私設の道路を含む既設道路を道路法の道路にする場合 など 1)
- 道路の線型改良、拡幅、舗装
- バイパスの新築(道路の区域変更による場合) など
新設も改築も、道路用地の取得などの施行に必要な一切の行為を含む 1)
〇 道路法 第13条
- 道路の巡視、清掃、除草、除雪、その他(道路法施行令第35条の2)
- 剪定、舗装のパッチング など 2)
付加的に必要な機能及び構造の強化を目的とする行為
- 橋梁、トンネル、舗装等の劣化・損傷部分の補修
- 耐震補強、法面補強、防雪対策 など 2)
(実体としては修繕だが、法に特別の取り扱いが定められているために修繕とは区別されている)
- 道路の区域の決定及びその公示
- 道路の供用の開始及び廃止
- 道路管理者以外の者の行う道路に関する工事又は維持の承認
- 道路台帳の調製及び保管
- 占用関係事務
- 沿道区域の指定
- 通行の禁止又は制限
- 連結関係事務
- 受益者負担金の徴収に関する事務
- 公用負担に関する措置
- 監督処分 など 1)
〇 道路法 第20条
1) 道路法令研究会編著、改訂6版 道路法解説、大成出版社、2023、P.89〜90、P.98〜99
2) 検討会とりまとめ(参考資料)(国道(国管理)の維持管理等に関する検討会)
3) 公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法 第2条(e-Gov法令検索)
道路の通行禁止や制限
道路管理者は、道路の破損や欠壊などで交通が危険なときや、工事のためやむを得ないときに、道路の通行を禁止したり制限することができます。 異常気象時通行規制や車両の高さや重量の制限なども行っています。
- 詳細 道路の通行禁止や制限
道路台帳
道路台帳平面図の一例
図面出典〕神戸市HP 1)
道路管理者は道路台帳をつくり、閲覧に応じなければなりません(道路法 第28条)。
道路台帳の図面は、縮尺1/1000以上の道路の区域の境界線や車道の幅員などを記載した平面図と、地下埋設物台帳平面図や道路敷地構成図などの道路管理者毎に定めた図面からなります。 道路台帳の調書には路線名や路線の指定又は認定の年月日、路線の起点及び終点などが記載されます(道路法施行規則 第4条の2、道路法施行規則 別記様式第四)。
- 道路台帳作成要領(平成31年3月、東京都建設局)
- 新潟県道路台帳関係要領(新潟県)
- 埼玉県道路台帳作成要領(埼玉県)
- 道路工事完成図等作成要領(第2版、国土技術政策総合研究所)
1) 道路の引継ぎに関する要綱(神戸市)