道路管理者は、道路の破損や欠壊などで交通が危険なときや、工事のためやむを得ないときに、道路の通行を禁止したり制限することができます。 異常気象時通行規制や車両の高さや重量の制限なども行っています。
道路の通行禁止や制限の概要
道路の通行禁止や制限を大きく分けると、次のようになります。
- 高速自動車国道や自動車専用道路の法定の出入の制限(高速自動車国道法 第17条、道路法 第48条の11)
- 道路交通法に定められている通行方法や交通方法(道路交通法 第2章、3章、4章の2)
- 公安委員会や警察署長が行う、道路標識等による通行の禁止や制限(道路交通法 第8条)
- 道路管理者が行う、道路標識による通行の禁止や制限(道路法 第46条)
ここでは、道路管理者が行う道路標識による通行の禁止や制限について紹介します。
道路管理者による道路の通行禁止や制限
通行止め(国道139号松姫トンネルの旧道)
(山梨県大月市、小菅村)
写真出典〕当サイト撮影(H28.11)
道路管理者は、道路の構造を保全したり交通の危険を防止するため、次の場合に区間を定めて道路の通行を禁止したり制限することができます(道路法 第46条)。
- 一 道路の破損、欠壊その他の事由に因り交通が危険であると認められる場合
- 二 道路に関する工事のためやむを得ないと認められる場合
道路監理員は、上記の第一号に該当して緊急の必要があるときは、一時、道路の通行を禁止したり制限することができます。 緊急に通行を禁止したり制限する状況としては、次のような時があります。
- 災害により路体が崩壊した場合
- 長期降雨により道路が軟弱になった場合 1)
- 路面が冠水している場合
- 路面又は路肩が軟弱になって交通が危険であると認められる場合
- 沿道斜面から土砂崩落が予想される場合 2)
水底トンネルは特別の禁止や制限ができます(道路法 第46条)。
上述の条件に当てはまらない状況で、道路における危険を防止したり、交通の安全と円滑を図るために通行を規制するときは、公安委員会の規制や、緊急の場合は現場の警察官の指示によります(道路交通法 第4条)。
異常気象時通行規制等
青梅街道の異常気象時通行規制(東京都奥多摩町)
写真出典〕当サイト撮影(H30.9)
異常気象時通行規制区間の起点とゲート
(都道201号十里木御嶽停車場線、東京都あきる野市)
写真出典〕当サイト撮影(H30.8)
大雨や台風などの異常気象時に土砂崩れや落石などの恐れがある区間では、過去の記録などを元に連続雨量や時間雨量による規制の基準を定め、雨量が規制値に達すると通行止めにする異常気象時通行規制が行われています。
吹雪や越波、強風、河川氾濫などの危険がある区間で、パトロールなどで現地状況を判断して規制を行う特殊通行規制も行われています。
国道では令和2年(2020)度末現在、異常気象時通行規制区間が730区間、5,389km、特殊通行規制区間が287区間、1,256km指定されていて、都道府県道でも指定されています 3) 4) 5) 。
道路管理者による車両の高さや重量の制限
道路を通行できる車両の一般的な制限は、幅2.5m、高さ3.8m、総重量20t(指定道路は25t等例外あり)等とされています。〔参考:道路を通行できる車両の制限〕
高さ制限
(321)
重量制限
(320)
道路管理者はトンネル、橋、高架の道路その他これらに類する構造の道路について、車両でその重量又は高さが安全であると認められる限度をこえるものの通行を禁止したり制限することができます(道路法 第47条、車両制限令)。 高さ制限をするときは20〜30cm程度の余裕を見ることが多いようです 2) 。
3.6mの高さ制限(山梨県道522号棡原藤野線)
写真出典〕当サイト撮影(R3.3)
14tの重量制限(国道469号)
写真出典〕当サイト撮影(R3.11)
最大幅
(322)
最大幅標識は道路管理者がその道路を通行できる幅の限度を個別に定めるものではなく、車両制限令に定められた道路の幅員に応じた車両の最大幅を特に明示する必要があるときに設置する標識です(車両制限令 第5条、第6条)。
通行の禁止や制限の手順等
車両通行止め(東京都日の出町道)
写真出典〕当サイト撮影(R1.11)
道路の通行を禁止したり制限しようとするときは、緊急を要するためやむを得ないときを除き、当該地域を管轄する都道府県公安委員会の意見を聴く必要があります(道路法 第95条の2)。
道路の通行禁止や制限は、対象区間や期間、理由を記載した道路標識を設置して行います(道路法 第47条の15、旧第47条の5、道路標識、区画線及び道路標示に関する命令)。 設置する標識は、上述の重量制限(320)と高さ制限(321)のほか下記の標識です。
車両(組合せ)通行止め
(310)
二輪の自動車以外の自動車通行止め
(304)
車両進入禁止
(303)
車両通行止め
(302)
通行止め
(301)
徐行
(329)
一方通行
(326 A・B)
危険物積載車両通行止め
(319)
指定方向外進行禁止
(311A〜F)
土砂災害による車両通行止め
(都道202号上成木川井線、東京都青梅市)
写真出典〕当サイト撮影(R1.11)
異常気象時通行規制区間などでは遮断機などを併用して通行止を行ったり、通行止の橋梁などでは、バリケードで封鎖することも行われています。 状況によっては、緊急時の通行規制で孤立集落が生じるために避難所を開設するなど市町村と連携した対応や、国土交通省への連絡が必要になることもあります 6) 。 適切な交通規制を行わずに事故などが起こったときは、管理瑕疵を問われることがあります。(神奈川国道138号土石流自動車転落事件)
規制に従わない者への対応
道路の通行禁止や制限に従わない者への対応は、一般に警察が行います。 道路管理者や道路監理員も違反行為の中止を命じることができます(道路法 第71条)。 違反行為をした者や、道路監理員の中止命令に従わなかった者は、懲役や罰金に処せられます。(道路法 第103条、第104条)。
- 詳細 監督処分や代執行など
1) 道路法令研究会編著、改訂6版 道路法解説、大成出版社、2023、P.456
2) 道路法令研究会編著、道路管理の手引き、大成出版社、2014、P.171、172
3) 異常気象時における道路通行規制について、同 各都道府県知事あて(昭和44年4月1日道路局長通達、国土交通省 告示・通達一覧)
4) 危険箇所並びに異常気象時における道路通行規制の検討について(昭和45年10月9日国道第一課長通達、 〃 )
5) 道路データブック2022(国土交通省 道路IRサイト)
6) 道路災害等に関する情報連絡要領について(平成13年1月5日道路局長通達、国土交通省 告示・通達一覧)