積雪寒冷特別地域における道路交通の確保に関する特別措置法(雪寒法)は、積雪寒冷の度が特にはなはだしい地域における道路の交通を確保するため、当該地域内の道路につき、除雪、防雪及び凍雪害の防止について特別の措置が定められたもので、国庫補助の特例などが定められています。
雪寒法の概要
積雪地域の道路管理者は、雪寒法に基づき国の補助を受けて、除雪などを行っています。
『積雪寒冷特別地域における道路交通の確保に関する特別措置法(通称雪寒法)』では、政令で定める基準に該当する『積雪寒冷の度が特にはなはだしい地域』で道路交通を確保するため、その重要性等を踏まえた『指定道路』で、『積雪寒冷特別地域道路交通確保五箇年計画』に基づいて、除雪、防雪及び凍雪害の防止の『雪寒事業』を実施したときの、補助の特例などが定められています 1) 。
積雪寒冷特別地域における道路交通の確保に関する特別措置法 (抄)
(この法律の目的)
第一条 この法律は、積雪寒冷の度が特にはなはだしい地域における道路の交通を確保するため、当該地域内の道路につき、除雪、防雪及び凍雪害の防止について特別の措置を定め、もつてこれらの地域における産業の振興と民生の安定に寄与することを目的とする。
積雪寒冷地域
積雪寒冷地域
図表出典〕雪センターHP(リンク切れ)
雪寒法の対象となる『積雪寒冷の度が特にはなはだしい地域』は、施行令で『二月の積雪の深さの最大値の累年平均が五十センチメートル以上の地域又は一月の平均気温の累年平均が摂氏零度以下の地域』とされており、具体には右図の地域となっています。
冬期道路交通確保のあり方に関する検討委員会
平成25年の五箇年計画の策定と雪寒道路の指定の先立ち、国土交通省は『冬期道路交通の確保のあり方に関する検討委員会』で、集中的な降雪の増加、財政状況など行政対応の限界、地域の建設業の体力低下などの状況を踏まえ、冬期道路交通確保のあり方を検討しました。 委員会は、代替ルートがある場合等において計画的に冬期の道路サービス水準を低下させることや、道路除排雪計画の継続的な見直しを国は雪寒指定道路制度から支援すべきことなどを提言しました。
積雪寒冷特別地域道路交通確保五箇年計画
平成30年12月18日に平成30年度(2018)〜平成34年度(2022)を計画期間とする『積雪寒冷特別地域道路交通確保五箇年計画』が閣議決定されました。
積雪寒冷特別地域における道路交通の確保に関する特別措置法 (抄)
(積雪寒冷特別地域道路交通確保五箇年計画)
第四条 国土交通大臣は、昭和四十八年度以降の毎五箇年を各一期として、当該期間中の前条の規定により指定された道路に関する積雪寒冷特別地域道路交通確保五箇年計画(以下「道路交通確保五箇年計画」という。)の案を作成して、閣議の決定を求めなければならない。
(略)
第五条 道路交通確保五箇年計画は、次に掲げる事項につき定めなければならない。
一 除雪(除雪機械の整備を含む。次条において同じ。)に関する事項
二 防雪に関する事項
三 凍雪害の防止(流雪溝の整備を含む。以下同じ。)に関する事項
五箇年計画の計画内容(抜粋)
指定された道路を対象に次に掲げる事業を行う。
1.除雪に関する事項
- 指定された道路のうち、積雪の度が特にはなはだしい地域における道路について、除雪を実施する。
- 除雪機械の整備について現在の除雪水準を維持するために必要な範囲内で行う。
2.防雪に関する事項
- なだれ、飛雪又は積雪により交通に支障を及ぼすおそれがある箇所について、吹きだまり防止施設、なだれ防止施設又は融雪施設等を整備する。
3.凍雪害の防止に関する事項
- 凍上、融雪による路盤の破壊のおそれがある箇所について、路盤改良を実施する。
- 積雪により交通に支障を及ぼすおそれがある箇所について、流雪溝の整備、堆雪幅の確保を実施する。
雪寒指定道路
『積雪寒冷の度が特にはなはだしい地域』で、『交通量が国土交通大臣が定める道路の交通量の基準に適合し、かつ、産業の振興又は民生の安定のため道路の交通の確保が特に必要であると認められる』道路が雪寒指定道路に指定されます。 交通量の基準は300台/日以上またはバス路線などで150台/日以上などとなっています。
平成25年11月に平成4年以来21年ぶりに雪寒指定道路が見直されて、3万km以上の道路が新規に指定され、雪寒指定道路は約15万kmとなりました。 指定された道路は、平成25年11月12日付官報号外第244号に掲載されています。
なお、雪の多い北陸地方でも、県管理道路は9割以上が指定されていますが、市町村道は半分程度の指定になっています 2) 3) 。
道路全体 | 国道 | 道府県道 | 市町村道 | |
---|---|---|---|---|
指定延長 (伸率) |
約149,160 km (1.28) |
約26,050 km (1.04) |
約52,150 km (1.07) |
約70,960 km (1.66) |
積雪寒冷特別地域における道路交通の確保に関する特別措置法 (抄)
(路線の指定)
第三条 国土交通大臣は、第一条の目的を達成するため、同条に規定する地域内において道路の交通の確保が特に必要であると認められる道路を指定しなければならない。
2 前項の指定は、積雪又は寒冷の度、道路の重要性その他の事情を勘案して政令で定める基準に従つて行うものとする。
3 国土交通大臣は、第一項の指定をした場合には、当該道路の路線名及び区間を官報で公示しなければならない。
積雪寒冷特別地域における道路交通の確保に関する特別措置法施行令 (抄)
(道路の指定)
第一条 積雪寒冷特別地域における道路交通の確保に関する特別措置法 (以下「法」という。)第三条第一項 の指定は、二月の積雪の深さの最大値の累年平均(最近五年以上の間における平均をいう。以下この条において同じ。)が五十センチメートル以上の地域又は一月の平均気温の累年平均が摂氏零度以下の地域内に存する道路で、その交通量が国土交通大臣が定める道路の交通量の基準に適合し、かつ、産業の振興又は民生の安定のため道路の交通の確保が特に必要であると認められるものについて行うものとする。
雪寒事業
道路管理者が、『積雪寒冷特別地域道路交通確保五箇年計画』に基づいて、積雪の度がはなはだしい地域の『雪寒指定道路』で除雪を行うと国がその費用の2/3を補助することになっています。 同様に五箇年計画に基づいて防雪や凍雪害防止を行うと、国は6/10を補助することになっています。
雪寒事業 | 雪寒道路事業 | 除雪 | 車道除雪 | 補助2/3 | |
歩道除雪 | |||||
防雪 | 防災防雪 | 雪崩対策 | 補助6/10 | ||
地吹雪対策 | |||||
一般防雪 | 消融雪施設 | ||||
チェーン着脱場 | |||||
気象情報システム | |||||
凍雪害防止 | 路盤改良 | 補助6/10 | |||
流雪溝 | |||||
堆雪幅 | |||||
除雪機械整備 | 補助2/3 |
積雪寒冷特別地域における道路交通の確保に関する特別措置法 (抄)
(費用の補助)
第六条 国は、道路管理者(国土交通大臣である道路管理者を除く。)が道路交通確保五箇年計画に基づいて実施する除雪、防雪又は凍雪害の防止に係る事業に要する費用については、道路法 (第八十八条を除く。)及び道路の修繕に関する法律 (昭和二十三年法律第二百八十二号)の規定にかかわらず、政令で定めるところにより、除雪に係るものにあつてはその三分の二を、防雪又は凍雪害の防止に係るものにあつてはその十分の六を道路管理者に対して補助するものとする。
- 積雪寒冷特別地域における道路交通の確保に関する特別措置法(昭和31年4月14日法律第72号)
- 積雪寒冷特別地域における道路交通の確保に関する特別措置法施行令(昭和32年7月10日政令第192号)
- 冬期道路交通の確保のあり方に関する検討委員会提言(平成25年5月、同委員会)
- 積雪寒冷特別地域道路交通確保五箇年計画(平成30年12月18日閣議決定)
1) 道路法令研究会編著、改訂6版 道路法解説、大成出版社、2023、P.31
2) 道路延長に占める雪寒道路延長(県管理)(平成22年1月、第3回地方の社会資本整備プロジェクトチーム会議、福井県配付資料)
3) 北陸地方における道路除雪の状況と効果(国総研レポート 2014)