道路法第42条 道路の維持又は修繕

 道路法第42条は、道路管理者の道路の維持・修繕の義務を定めています。
 維持については、「清掃、除草、除雪その他の道路の機能を維持するために必要な措置を講ずること」とされています。
 点検と修繕については、橋梁、トンネル、シェッド、大型カルバート、門型標識などについて「定期点検要領」が定められ、5年に1度、近接目視点検を行い、その結果を4段階に分類し診断結果を保存するとともに、効率的な修繕を行うこととされています。

道路法第42条の趣旨

 道路法第42条は、道路管理者が道路を常時良好な状態に保つように、維持・修繕をしなければならない旨を定めています。

道路法 (昭和27年6月10日法律第180号)
  • (道路の維持又は修繕)
  • 第四十二条  道路管理者は、道路を常時良好な状態に保つように維持し、修繕し、もつて一般交通に支障を及ぼさないように努めなければならない。
  • 2  道路の維持又は修繕に関する技術的基準その他必要な事項は、政令で定める。
  • 3  前項の技術的基準は、道路の修繕を効率的に行うための点検に関する基準を含むものでなければならない。

法第一項関係

 道路管理者が行わなければならない「維持」と「修繕」とはなにか、次のような定義(案)が提案されています 1)

  • 維持管理‥管理のうち、維持、修繕、災害復旧その他の管理行為
  • 維持‥道路の機能及び構造の保持を目的とする日常的な行為
        (巡回、清掃、除草、剪定、除雪、舗装のパッチング等)
  • 修繕‥道路の損傷した構造を当初の状態に回復させる行為
        (橋梁、トンネル、舗装等の劣化・損傷部分の補修)
       付加的に必要な機能及び構造の強化を目的とする行為
        (耐震補強、法面補強、防雪対策等)

法第二項関係

 政令で定めることとされた技術的基準は、後掲のとおり、道路法施行令第35条の2に定められています。

法第三項関係

 道路の修繕は、『劣化が進行してから修繕を行う「事後対応」型ではなく、構造物の点検を定期的に行い、損傷が軽微なうちに修繕などの対策を講じる「予防保全」型の維持・修繕を道路管理者が実施することが、安全かつ円滑な交通の確保及び効率的な道路管理を実現するためには重要であるとの考え 1) 』から、平成25年(2013)に第3項が追加されました。

道路法施行令

 道路法施行令第35条の2に、政令で定める技術的基準が定められています。

道路法施行令  (昭和27年12月4日政令第479号)
  • (道路の維持又は修繕に関する技術的基準等)
  • 第三十五条の二 法第四十二条第二項の政令で定める道路の維持又は修繕に関する技術的基準その他必要な事項は、次のとおりとする。
  • 一 道路の構造、交通状況又は維持若しくは修繕の状況、道路の存する地域の地形、地質又は気象の状況その他の状況(次号において「道路構造等」という。)を勘案して、適切な時期に、道路の巡視を行い、及び清掃、除草、除雪その他の道路の機能を維持するために必要な措置を講ずること。
  • 二 道路の点検は、トンネル、橋その他の道路を構成する施設若しくは工作物又は道路の附属物について、道路構造等を勘案して、適切な時期に、目視その他適切な方法により行うこと。
  • 三 前号の点検その他の方法により道路の損傷、腐食その他の劣化その他の異状があることを把握したときは、道路の効率的な維持及び修繕が図られるよう、必要な措置を講ずること。
  • 2 前項に規定するもののほか、道路の維持又は修繕に関する技術的基準その他必要な事項は、国土交通省令で定める。

経緯

 政令で定めることとされていた道路の維持、修繕に関する技術基準は、「個別具体の道路の状況や、地形、気候の問題などを細かく考慮することが必要であるため、全国的に一般的な法規範としては定めにくい 1) 」ため、長らく制定されておらず、『道路の維持修繕等管理要領について(昭和37年8月28日道路局長通達)』などに基づき運用されてきました。

 平成25年(2013)に道路法施行令第35条の2が追加され、道路の維持又は修繕に関する技術的基準が定められました。

維持

 「維持」については、道路法施行令で、「道路の巡視を行い、及び清掃、除草、除雪その他の道路の機能を維持するために必要な措置を講ずること」とされました。

点検

 「点検」については、道路法施行令で、点検は「適切な時期に、目視その他適切な方法により行うこと」等とされ、道路法施行規則で、点検は「必要な知識及び技能を有する者が行うこととし、近接目視により、五年に一回の頻度で行うことを基本とする」等とされました。

道路法施行規則

 道路法施行規則第4条の5の6(旧:第4条の5の5)に道路法施行令で定めることとされている技術的基準が定められています。

 トンネルや橋等の点検は近接目視により5年に1回の頻度で行うことが基本とされています。

道路法施行規則 (昭和27年8月1日建設省令第25号)
  • (道路の維持又は修繕に関する技術的基準等)
  • 第四条の五の六 令第三十五条の二第二項の国土交通省令で定める道路の維持又は修繕に関する技術的基準その他必要な事項は、次のとおりとする。
  • 一 トンネル、橋その他道路を構成する施設若しくは工作物又は道路の附属物のうち、損傷、腐食その他の劣化その他の異状が生じた場合に道路の構造又は交通に大きな支障を及ぼすおそれがあるもの(以下この条において「トンネル等」という。)の点検は、トンネル等の点検を適正に行うために必要な知識及び技能を有する者が行うこととし、近接目視により、五年に一回の頻度で行うことを基本とすること。
  • 二 前号の点検を行つたときは、当該トンネル等について健全性の診断を行い、その結果を国土交通大臣が定めるところにより分類すること。
  • 三 第一号の点検及び前号の診断の結果並びにトンネル等について令第三十五条の二第一項第三号の措置を講じたときは、その内容を記録し、当該トンネル等が利用されている期間中は、これを保存すること。
  • 四 橋、高架の道路その他これらに類する構造の道路と独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構若しくは鉄道事業者の鉄道又は軌道経営者の新設軌道とが立体交差する場合における当該鉄道又は当該新設軌道の上の道路の部分の計画的な維持及び修繕が図られるよう、あらかじめ独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構、当該鉄道事業者又は当該軌道経営者との協議により、当該道路の部分の維持又は修繕の方法を定めておくこと。

トンネル等の健全性の診断結果の分類に関する告示

 道路法施行規則第4条の5の6第2項の点検結果を分類する「国土交通大臣が定めるところ」は、「トンネル等の健全性の診断結果の分類に関する告示」で定められています。

 トンネル等の健全性は4段階に区分することとされています。

トンネル等の健全性の診断結果の分類に関する告示 (平成26年国土交通省告示第426号)

 トンネル等の健全性の診断結果については、次の表に掲げるトンネル等の状態に応じ、次の表に掲げる区分に分類すること。

区分 状態
T 健全 構造物の機能に支障が生じていない状態。
U 予防保全段階 構造物の機能に支障が生じていないが、予防保全の観点から措置を講ずることが望ましい状態。
V 早期措置段階 構造物の機能に支障が生じる可能性があり、早期に措置を講ずべき状態。
W 緊急措置段階 構造物の機能に支障が生じている、又は生じる可能性が著しく高く、緊急に措置を講ずべき状態。
※施行:平成26年7月1日

定期点検要領

 自治体等への技術的助言として、省令及び告示の規定に基づいた具体的な点検方法や主な変状の着目箇所、判定事例写真等を示した定期点検要領が下記のとおり定められています。

 なお、技術的助言となる点検要領は、「国土交通省道路局」名のものです。 同じ表題か似たような表題で、国土交通省等が管理する道路の点検要領が「国土交通省道路局国道・防災課」名でだされています。 各道路管理者は必要に応じて、国土交通省等が管理する道路の点検要領等を参考にできるものとされています。

平成25年の法改正の概要

 『社会資本整備審議会 道路メンテナンス技術小委員会』は、平成24〜25年度(2012〜2013)に、道路構造物の適切な管理のための基準類のあり方の調査、検討を行いました。 また、『国道(国管理)の維持管理等に関する検討会』は、平成24年度(2012)にそのあり方について議論しました。

 それらを踏まえ、予防保全の観点も踏まえて道路の点検を行うべきことを明確化するため、平成25年(2013)に道路法第42条第3項と 1) 、道路法施行令第35条の2が追加されました 2)

 平成26年(2014)に、道路法施行規則に第4条の5の2が追加され、「トンネル等の健全性の診断結果の分類に関する告示」が公布されました 3)

 地方公共団体における円滑な点検の実施のための技術的助言として、省令及び告示の規定に基づいた、具体的な点検方法、主な変状の着目箇所、判定事例写真等を示した定期点検要領が策定されました 4)

平成28年の施行規則改正の概要

 平成28年(2016)に道路法施行規則第4条の5の6(旧:第4条の5の5)に第4項が追加され、道路管理者は鉄道事業者等との協議により、あらかじめ跨線橋の維持又は修繕の方法を定めておくべき旨が定められました 1)