路上障害物に関する事故

 先行車からの落下物、第三者や道路管理者が道路上に置いた物件、沿道から張り出した樹木や倒木、街路樹、路肩等の雑草、放置車両などによる事故について紹介しています。
 道路上に不法に置かれた物件や、沿道から張り出した樹木や倒木による事故で管理瑕疵を問われた事例があります。

路上障害物に関する事故の概要

 路上障害物に関する事故とは、先行車からの落下物や、第三者や道路管理者が路上に置いた物件、沿道から張り出した樹木や倒木、街路樹、放置車両などによる事故です。

 事故の多くが第三者の行為や沿道の民有地の管理に関連して起きています。 不法行為をした人がその賠償責任を負うのは当然ですが、第三者の不法行為によって道路が通常有すべき安全性を欠いてしまったときに、道路管理者も管理瑕疵を問われる場合があります。

 その一方で、例えば、沿道の樹木が道路の建築限界を犯して危険な状態になっていたときに、土地所有者が剪定をしてくれれば問題は解決しますが、応じて貰えないときの対応の難しさがあります。

 管理瑕疵を問われたか否かを別として、資料に掲載されている裁判例から事故が起きた状況をみると、次のような傾向が見られます 1) 2) 3)

○ 先行車からの落下物

 先行車からの落下物による事故は15件が掲載されていて、すべての案件で「回避可能性」がないから管理瑕疵がないなどと判示されていて、管理瑕疵を認めた裁判例は見つかりませんでした。

○ 道路に置かれた物件

 路上の物件よる事故は27件が掲載されていて、その4割は不法に置かれた物件による事故です。 裁判例のうち6割の案件では通常の通行方法で事故が起こるとは考えにくいなどの理由で管理瑕疵がないとされています。

○ 沿道の樹木や倒木、街路樹等

 沿道の樹木や街路樹が建築限界を侵していたための生じた事故や、倒木による事故は24件が掲載されています。 そのうち1/3の案件では、例えば倒れることが予想できない樹木であったなど「予見可能性」や「回避可能性」から管理瑕疵がないと判示されています。

○ 放置車両等

 放置車両で道路管理者の管理瑕疵を問われた裁判例があります。

先行車からの落下物

 先行車からの落下物に衝突した場合、警察に交通事故として通報し、車両保険で補償をして貰うのが一般的な対応です。 道路上に物を落とすことは不法行為なので、物を落とした人に民法上の賠償責任が生じます道路法 第43条道路交通法 第75条の10

 先行車からの落下物で道路管理者の責任が問われた裁判では、落下物を回避できない速度で走行する高速道路や幹線道路での事故が大半です。 これらの道路では道路パトロールで落下物にも対応しているため、道路管理者が落下物を処理する時間的余裕がなく、回避可能性がないことから瑕疵がないと判示されています。 先行車からの落下物による事故で、管理瑕疵を認めた判決は見当たりませんでした。

東京国道14号路上落下物原付自転車転倒事件 (東京地判平成13年6月28日)

○ 事故の概要
 平成10年(1998)。 原付自転車が道路上に散乱していたプラスチック片に乗り上げ横転し、駐車中の乗用車に追突して負傷した。

○ 判決の要旨
 プラスチック片が散乱してから事故発生までの間にはわずかな時間的間隔しかなく、これを除去することはおよそ不可能であったと認められることから、被告の道路管理に瑕疵はなかった 1) 2)

 1) 道路管理瑕疵研究会編集、第四次改訂版 道路管理瑕疵判例ハンドブック、ぎょうせい、2022年、P.117
 2) 訴訟事例紹介 東京国道14号原付自転車転倒損害賠償請求事件道路行政セミナー 2003.8

道路に置かれた物件

 道路上に物件があったとしても、通常の通行方法では容易に回避できる八千代市道遊歩道構造物自転車転倒事件ことなどから、6割の案件で管理瑕疵がないとされています。

 道路管理者が置いた物件では、警戒灯などの保安施設もなく工事用の資機材などを置いていたために、管理瑕疵を問われた事例があります北九州市道土砂砕石等放置事件

段差解消ブロックの画像

道路上に置かれた段差解消ブロック

写真出典〕さいたま市HP

https://www.city.saitama.jp/005/003/011/004/p007934.html

 道路上に不法に置かれたガスボンベや段差解消ブロックが原因となった事故で管理瑕疵を問われた事例があります京都市道道路上設置ガスボンベ炎上事件、宇都宮地判平成27年8月20日)

 不法物件についての判決は、その対応に苦慮している担当者の心情とは一致しないものですが、管理瑕疵の判断は、その道路が通常有すべき安全性を有していたか否かで判断され、その原因が不法物件か否かで判断されるものではありません。 道路管理者が管理瑕疵を問われた後に、不法行為者へ求償をすることになります。

八千代市道遊歩道構造物自転車転倒事件 (東京地判平成29年9月1日)

○ 事故の概要
 平成24年(2012)。 日中に遊歩道を走行していたスポーツ用自転車が、車両進入禁止用のポールの土台(46cm四方、高さ6cm)に乗り上げ、転倒して負傷した。 ポールは設置されていなかった。

○ 判決の要旨
 転倒地点の相当手前から土台の存在に気づくことができ、土台を避けるなどして通行できるから、本件道路の危険性は高いものとは言えない。 事故は、速度を相当出していたことにより生じた 1)

 1) 道路管理瑕疵研究会編集、四訂版 道路管理瑕疵判例ハンドブック、ぎょうせい、2022年、P.252

北九州市道土砂砕石等放置事件 (福岡地判昭和41年7月29日)

○ 事故の概要
 昭和37年(1962)。 市職員が道路上9箇所に高さ60cm、直径2mの円錐形に補修用の砕石を堆積した。 原付自転車が砕石の山に乗り上げて転倒し、運転者が死亡した。

○ 判決の要旨
 道路管理者は、赤色灯をつけるなどして砕石の山の発見を容易ならしめる義務があった。
 日の出前で薄暗かったものの、現場は見通しが良いのに被害者が砕石の山に気づかなかったことと、かなりの速度で進行していたことから、75%を過失相殺する 1)

 1) 道路管理瑕疵研究会編集、改訂版 道路管理瑕疵判例ハンドブック、ぎょうせい、2003年、P.113

京都市道道路上設置ガスボンベ炎上事件 (京都地判昭和59年10月12日)

○ 事故の概要
 昭和52年(1977)。 不法に道路にはみだして建築された建物の外側に置かれていたガスボンベに車が衝突して炎上し、隣の工場に延焼し、隣の工場主から管理瑕疵を問われた。

○ 判決の要旨
 道路管理者は不法占用者に再三にわたり撤収の勧告や、二度にわたる監督処分をしていたが、強制撤去などの措置をとらなかった。 安全保持のために必要な措置を講じなかったのであるから、通常備えるべき安全性を欠いていた。
 不法占用者とガスボンベ所有者も有責 1)

 1) 道路管理瑕疵研究会編集、第四次改訂版 道路管理瑕疵判例ハンドブック、ぎょうせい、2022年、P.110

沿道の樹木や倒木、街路樹等

道路の建築限界

 道路には構造物などを配置してはいけない範囲として、原則、車道で高さ4.5m、歩道で高さ2.5mの建築限界が定められています道路構造令 第12条

 車道の建築限界は、重要物流道路では4.8mになります。 歩道などがあって路肩を設けない道路では、ドアミラーなどの突出物の関係で車道の外側に25cmの建築限界がとられます。 路肩(下図のe)が設けられている道路では、路端で高さ3.8mまで縮小されます。

 歩道の建築限界は、街路樹などの路上施設が設けられている部分を除き、高さ2.5mです。

表−建築限界の規定の概要
歩道の建築限界 車道の建築限界
建築限界の図 車道に接続して
路肩を設けない道路
車道に接続して
路肩を設ける道路
建築限界の図 建築限界の図
 注)詳細は、「道路構造令」や「建築限界国土交通省 道路構造令の各規定の解説)」を参照

沿道から張り出した樹木や倒木

沿道から張り出した樹木の写真

 民有地などからの樹木の枝の張り出しや倒木などを防ぐことは、土地の所有者や工作物の占有者などが負っている責務です。 その瑕疵によって他人に損害を生じたときは、土地の所有者などが賠償する責任を負います民法第717条第2項生垣所有者の責任が問われた事件和歌山国道42号松の木衝突事件

沿道から張り出した樹木の写真

沿道から張り出した樹木(東京都八王子市、国道16号他)
参考:行政代執行の事例(沿道から張り出した樹木)

写真出典〕当サイト撮影(R1.9)

 道路の管理瑕疵が問われた事件では、「予見可能性」や「回避可能性」の有無で判断が分かれているようです。 倒れることが予想できない樹木であったために管理瑕疵がないとした裁判例があります大阪府道樹木落下自動車損傷事件市川市道銀杏の枝落下事件。 その一方で、道路の建築限界を侵していた木の枝に車が衝突したり、予見不可能あるいは回避不可能であったとは言えない倒木が通行車を直撃した事故では管理瑕疵が問われています和歌山国道42号松の木衝突事件兵庫県道倒木自動二輪車直撃事件

 沿道の土地から伸びて道路の建築限界を犯している樹木や倒れそうな樹木などは、その所有者などに枝打ちや伐採を依頼する必要があります。 それに応じて貰えないときは、改正された民法で対応するとか令和3年の民法改正、標識を設置して事故を回避するなどの対応をする必要があります。

参考〕生垣所有者の責任が問われた事件 (大阪地判平成19年5月9日)

○ 事故の概要
 自転車で歩道を走行してた小学生が、沿道から張りだした生垣の枝を避けようとして車道上に転倒し、自動車に轢かれて死亡したため、生垣の所有者に損害賠償を求めた。

○ 判決の要旨
 道路に沿って設置された竹木の管理者は,その竹木が交通の往来に危険を及ぼすおそれがあると認められる場合には,その危険を防止するため道路上に竹木がはみ出さないようにするなど必要な措置を講じなければならないとして、生垣の所有者の工作物責任を認めた 1)

 1) 歩道部分への生垣の枝の張り出し国土技術政策総合研究所 建物事故予防ナレッジベース

和歌山国道42号松の木衝突事件 (和歌山地田辺支判昭和47年7月26日)

○ 事故の概要
 昭和45年(1970)。 対向車を避けるために路肩に入った貨物自動車の屋根が、沿道の町役場出張所構内から道路上に突出していた松の木に衝突した。 松の木は路肩外側端の上空2.6m、車線外側端の上空3.35mにあった。 道路管理者と松の木の所有者に損害賠償を求めた 1)

○ 判決の要旨
 道路管理者は車両の運行の障害となるものの排除を怠った 1)
 松の木所有者は、これを国道上から撤去するなど危険防止について適当な措置を講じなければならない。 松の木の所有者は民法第717条第2項に基づき賠償する責任がある 2)

○ 参考
 沿道の樹木所有者にせん定を依頼する広報に良く使われている裁判例です。

 1) 道路管理瑕疵研究会編集、第四次改訂版 道路管理瑕疵判例ハンドブック、ぎょうせい、2022年、P.102
 2) 道路上に張り出し又は交通に支障を及ぼすおそれのある竹木等の伐採・せん定・適正な管理のお願い兵庫県庁

大阪府道樹木落下自動車損傷事件 (大阪地判平成21年2月24日)

○ 事故の概要
 平成20年(2008)。 阪奈道路の追越車線を走行中に、道路上の倒木に突っ込み自動車が損傷した。

○ 判決の要旨
 倒木は道路脇に生えていた、人間の腕ほどの太さの幹の生木であった。 そのような樹木が急に倒れるという事態は予測困難と言えるから、本件道路の管理に瑕疵はなく、本件事故は不可抗力によって生じた 1) 2)

 1) 道路管理瑕疵研究会編集、第四次改訂版 道路管理瑕疵判例ハンドブック、ぎょうせい、2022年、P.124
 2) 訴訟事例紹介 走行中の乗用車が、突然落下してきた沿道樹木の一部と衝突し損傷した事故について、道路の管理瑕疵が争われた事例道路行政セミナー 2010.8

市川市道銀杏の枝落下事件 (最高裁判昭和57年5月27日、東京高判昭和56年9月30日)

○ 事故の概要
 昭和51年(1976)。 沿道の神社の銀杏の木の枝が強風で折れて落下し、道路上で立ち話中の人にあたって死亡した。

○ 判決の要旨
 大枝が腐朽する等して、通常吹く程度の風によって落下する蓋然性のある状態に至ったときは、通常竹木が有すべき安全性を欠き、瑕疵があると解するべきである。 本件枝の先端は道路に伸び出しておらず、枯死部分はなく、折れ口に異常がなかったことから、道路に管理瑕疵があったとは認められない。
 樹木所有者も無責 1)

 1) 道路管理瑕疵研究会編集、第四次改訂版 道路管理瑕疵判例ハンドブック、ぎょうせい、2022年、P.108

兵庫県道倒木自動二輪車直撃事件 (最高裁判平成18年6月1日)

○ 事故の概要
 平成13年(2001)。 自動二輪車で県道を走行していたところ、強風のため県道脇の民有林から枯れた松の木が倒れかかかり、頭部を直撃したため死亡した。

○ 判決の要旨
 山林は以前から十分な管理がされていなかったから、立ち枯れの樹木が県道に倒れ込んでくることは、予測可能であった。 例えば、数年に一回程度でも、徒歩又はパトロール車の最徐行若しくは停止による調査等をすることにより、立ち枯れの状態にある倒木の存在を確認することは、さほど困難なことではなかった。
 本件事故の発生が予見不可能あるいは回避不可能であったとみとめることはできないので、管理に瑕疵があった 1) 2)

○ 判決の影響
 道路パトロールで、沿道民有地の倒木や枯れ木等を注意する必要が再認識された。

 1) 道路管理瑕疵研究会編集、第四次改訂版 道路管理瑕疵判例ハンドブック、ぎょうせい、2022年、P.120
 2) 訴訟事例紹介 自動二輪車に道路外からの倒木が直撃した事故について道路の管理瑕疵が争われた事例 −倒木接触事故損害賠償請求事件−(最高裁判平成18年6月1日、道路行政セミナー 2007.12

街路樹等

電柱の写真

建築限界を侵している電柱の注意喚起(東京都三鷹市)

写真出典〕当サイト撮影(R1.5)

 街路樹等も、道路の建築限界を侵していたために事故が起きたときは、沿道の樹木と同様に管理瑕疵の問題になります倉敷市道街路樹枝車両衝突事件

落枝対策の写真

ケヤキの落枝対策(東京都八王子市)
(植樹帯よりの車線を規制している)

写真出典〕当サイト撮影(H30.7)

落枝対策の写真

 台風などで倒れて被害が生じたときは、「予見可能性」や「回避可能性」によって管理瑕疵の有無が判断されています熊本国道443号ケヤキの木倒木衝突事件。 倒木や落枝は、台風などの強風や豪雪などが起因になっていますが、腐朽や枯枝(ケヤキ)の影響が大きいため、日頃から樹木の状態を点検して、伐採や支柱の補修をすることが必要です 1)

落枝対策の写真

中央分離帯に伸びた雑草(東京都日野市)

写真出典〕当サイト撮影(R1.9)

 また、雑草に覆われた路肩を走行した原付が転倒したり大阪国道163号雑草繁茂単車転倒事件、繁茂した雑草で視界が遮られた歩道から車道にでた歩行者が轢かれた事件(京都地判昭和60年4月17日)で、管理瑕疵があるとされた裁判例があります。

倉敷市道街路樹枝車両衝突事件 (岡山地判平成13年8月23日)

○ 事故の概要
 平成12年(2000)。 車両高さ2.8mの貨物自動車が、対向車をやり過ごすために路肩を走行したところ、街路樹の枝に荷台アルミ箱が衝突し、ハンドルをとられ前方の街路樹に衝突した。

○ 判決の要旨
 本件市道は車道幅員が4m前後と比較的狭く、反対方向への通行車両とすれ違う時に、できる限り路肩に寄るか、又は路肩上を走行することは予測できる。
 貨物自動車が枝などに接触する危険性があるにもかかわらず、剪定や伐採を十分に行わなかったのであるから、その道路管理には瑕疵があった。
 被害者は前方を注視して街路樹に接触ないし衝突しないよう運転すべき注意義務を怠ったと言わざるを得ず、その割合は7割と認める 1) 2)

 1) 道路管理瑕疵研究会編集、第四次改訂版 道路管理瑕疵判例ハンドブック、ぎょうせい、2022年、P.216
 2) 倉敷市道街路樹自動車衝突事故損害賠償請求事件道路行政セミナー 2003.5

熊本国道443号ケヤキの木倒木衝突事件 (熊本地判平成21年7月14日)

○ 事故の概要
 平成19年(2007)。 台風により街路樹のケヤキ1本のみが倒れ、走行中の乗用車を直撃し運転者と同乗者が負傷した。

○ 判決の要旨
 倒れた街路樹に外見上格別の損傷はなかったが、根元にベッコウタケの子実体(キノコ)が着生していた。 その子実体が存在するときは樹木内部が腐朽している可能性が高く、樹木を撤去すべき場合があるとされていることからすれば、事故の発生が予見不可能であったとみる余地はない。
 ベッコウタケの存在が確認されていれば、本件事故の前に伐採等により対処することができたから、回避可能性がなかったということもできない。
 そうすると、管理に瑕疵があったと認められる 1) 2)

○ 判決の影響
 街路樹維持業者などにベッコウタケの報告を求め、対処するようになった 3) 4)

 1) 道路管理瑕疵研究会編集、第四次改訂版 道路管理瑕疵判例ハンドブック、ぎょうせい、2022年、P.125
 2) 台風により街路樹が倒れ、走行中の普通乗用車に直撃した事故について、道路の管理瑕疵が争われた事例道路行政セミナー 2011.5
 3) ベッコウタケを見つけたらご連絡ください横浜市役所
 4) 道路や公園等の気になる樹木を見つけたらご連絡下さい北九州市役所

大阪国道163号雑草繁茂単車転倒事件 (大阪地判昭和57年4月27日)

○ 事故の概要
 昭和54年(1979)。 路肩を原付で走行中、法面に生育していた雑草に前輪を引っかけて転倒し、自動車に轢かれて死亡した。

○ 判決の要旨
 渋滞のため法規上通行が許されていない原付が路肩を通行していたことは、特に異常とは言えない。 路肩は雑草で覆われ、二輪車の走行に危険な状況と言えるから、通行の安全性を欠いていた。
 被害者は安全な速度と方法で運転すべきであるのにこれを怠り、法規に違反して路肩を走行した過失があるため、7割の過失相殺をする 1)

 1) 道路管理瑕疵研究会編集、第四次改訂版 道路管理瑕疵判例ハンドブック、ぎょうせい、2022年、P.207

放置車両等

 道路の中央線付近に78時間放置されていた故障車和歌山国道170号放置車両追突事件や、片側5車線の道路の中央寄り2車線に40台以上のトレーラーとともに駐車していたトレーラーに衝突した事故(東京地判平成8年9月19日)で、バリケードを設けるなどの安全措置をしていないとして、管理瑕疵を認めた裁判例があります。 その一方で、歩道に沿った車道上に放置されていた盗難車との衝突事故(大阪地判平成5年6月23日)では、盗難車を回避して走行することが容易であったことから管理瑕疵がないとされています。

和歌山国道170号放置車両追突事件 (最高裁判昭和50年7月25日、大阪高判昭和47年3月28日)

○ 事故の概要
 昭和40年(1965)。 故障のため幅員7.5mの国道の中央線寄りに87時間駐車していた大型貨物自動車に、60km/hで走行していた原動機付自転車が追突し運転者が死亡した。

○ 判決の要旨
 道路上に障害が生じたことを管理者が知り得べくもない時に事故が生じた場合には、不可抗力として管理者が免責される場合がある。 障害が発生してから3昼夜以上も経過しているのに、バリケードを設けるとか、道路の片側部分を通行止めにするなどの安全措置を全く講じなかった場合は、道路管理に瑕疵がある。
 被害者は前方不注視を伴う暴走運転をしていたので、7割5分を過失相殺する。
 貨物自動車の運転者と所有者も有責 1)

○ 判決の影響
 路上放置車両への対応が順次整理された。

 1) 最高裁判昭和50年7月25日大阪高判昭和47年3月28日裁判所裁判例情報
 2) 道路管理瑕疵研究会編集、第四次改訂版 道路管理瑕疵判例ハンドブック、ぎょうせい、2022年、P.105