道路上の物件に対する対応として、路上放置車両は車両の状況に応じて警察と分担して対応するほか、やむを得ない場合に移動することができます。 違法放置物件(不法占用物件)は廃棄物としての処理、違法放置等物件としての除去、その他の不法占用物件に対する監督処分などを行います。
〔目次〕
道路上の物件に対する対応の概要
道路法には、様々な不法行為に対応するために監督処分から始まって代執行や告発などに至る一連の対処法が定められています。 路上放置車両や道路上に不法に置かれた物件(不法占用物件)については、監督処分等のほかに、それぞれの対処法が定められています。
路上放置車両については、車両の状況に応じて警察と分担して対応するほか、やむを得ない場合に移動することができます。
違法放置物件(不法占用物件)については、廃棄物としての処理、違法放置等物件としての除去、その他の不法占用物件に対する監督処分などを行います。
物件の状況等 | 道路管理者の措置 | ||||
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車両である | 「路上放置車両等の処理と移動」を参照 | ||||
所有者が確認できる車両 | (警察が道路交通法等により処理) | ||||
所有者が確認できない車両 | |||||
経済的に価値がある車両 | (警察が遺失物法により処理) | ||||
経済的に価値が極めて小さく、かつ放棄したと認められる車 | 違法放置等物件に対する措置(法第44条の3) | ||||
車両でない | |||||
経済的価値がなく、明らかに廃棄されたと認められる物件 | 廃棄物として通常の維持管理、清掃により処理する 1) | ||||
有価物 | |||||
・道路の構造に損害をおよぼしている ・交通に危険を及ぼしている ・上記のおそれがある |
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監督処分を命じられる | |||||
命じた者が従った | (所有者等が措置) | ||||
命じた者が従わない | 違法放置等物件に対する措置(法第44条の3) | ||||
所有者等が現場にいないために監督処分を命じられない | |||||
損害や危険を及ぼすとは認められない | |||||
所有者等判明 | 監督処分等(法71条1項) | ||||
所有者等不明 | 略式代執行(法71条3項) |
道路監理員は、車両の積載物が落下して交通に支障を及ぼすおそれがあるときなどに、車両の積載物の落下の予防等の措置を命じることができます。
1) 道路法の一部改正について(平成28年9月30日国道利第11号、国土交通省 告示・通達一覧)
2) 道路法の一部改正について(平成28年9月30日国道利第13号、 〃 )
3) 道路法の一部改正について(平成28年9月30日路政課事務連絡、 〃 )
路上放置車両等の処理と移動
路上放置車両の処理
現に交通に支障を及ぼしている路上放置車両については、とりあえずセーフティコーンを置くなど、その車両の存在を他の道路利用者に知らせるための措置が必要です 1) 2)。
路上放置車両の処理の分担は次のようになっています 1) 2)。
- 所有者が確認できたものについては、警察が道路交通法等により処理
- 所有者が確認できないもので経済的に価値のある車は、警察が遺失物法により処理
- 経済的に価値が極めて小さく、かつ放棄したと認められる車は、道路管理者が『違法放置等物件に対する措置』で処理
「交通上の障害となっている路上放置車両の処理方法(平成5年3月30日道交発第25号)」が定められています 5) 。
長時間放置された車両の移動等
道路の改築や修繕、災害復旧、維持のために緊急やむを得ない必要がある場合、道路に長時間放置された車両を移動することができます(道路法 第67条の2)。
例えば、除雪のように、作業の緊急性から除雪を行わないと一般交通に著しい支障を及ぼすようなときには、数十分でも長時間放置されている車両として移動することができます 4) 。
大規模災害時の車両移動
ホイールローダーによる車両の移動
写真出典〕国土交通省HP
大雪や震災などの大規模災害時に立往生車両や放置車両によって道路が閉塞したとき、緊急車両の通行ルートを迅速に確保する必要があります 6) 。
このため、道路管理者は、区間を指定して車両の運転者等に対して移動を命令したり、運転者が不在の車両などを移動することができます。 車両の移動の際は、やむを得ない限度で車両の破損が容認され(災害対策基本法 第76条の6)、その手引きも定められています 7) 。
1) 路上放置車両の処理について(昭和50年12月16日道交発第83号、国土交通省 告示・通達一覧)
2) 路上放置車両の処理に関する所要の措置について(昭和50年12月16日道交発第84号、 〃 )
3) 道路法の一部改正について 第3(平成3年11月1日道政発第58号、 〃 )
4) 道路法の一部改正について 第3(平成3年11月1日道政発第60号、 〃 )
5) 交通上の障害となっている路上放置車両の処理方法について(平成5年3月30日道交発第25号、 〃 )
6) 災害対策基本法の一部を改正する法律の公布について(国土交通省道路防災情報)
7) 災害対策基本法に基づく車両移動に関する運用の手引き(平成26年11月、 〃 )
不法占用物件等の取扱い
不法占用物件対応の概要
道路では私権が制限されて私法上の関係が成立しないため、道路を構成する土地を利用する関係はすべて占用になり、道路管理者の占用の許可を受けていないと不法占用になります。
道路パトロールや住民からの通報で不法占用物件が見つかったとき、道路管理者は行政指導を行って、不法占用者自らに撤去させるか、許可が可能な袖看板(突き出し看板)などは占用許可申請をするよう指導します。 袖看板は、落下事故が起きていることから、積極的に個別指導をすることになっています。
店舗の立て看板や陳列商品などについては、警察や商店会などと連携した行政指導も行われています。 捨て看板のような無価物は、道路清掃の一環として除却して一定期間保管したうえで処分します。
車両でない道路上の物件への対応は、次のとおり廃棄物、違法放置等物件、その他の不法占用物件で手順が異なっています。
廃棄物
経済的価値がなく、明らかに廃棄されたと認められる物件は、廃棄物として通常の維持管理、清掃により処理します。
違法放置等物件に対する措置
悪質な不法占用の事例
写真出典〕国土交通省HP
平成28年(2016)に道路法が改正されて、道路管理者は道路法第44条の3(旧:第44条の2)により車両からの落下物等だけでなく、交通に危険を及ぼす不法に設置された看板などの除去も可能になりました(道路法 第44条の3) 2) 。
有価物が次のいずれかの状況にあるときは、『違法放置等物件に対する措置』を講じることができます。
- 道路の構造に損害をおよぼしている
- 交通に危険を及ぼしている
- 上記のおそれがある
例えば、ガードレールに立てかけられている看板は倒れて、のぼり旗は強風で飛散して、歩行者や車両に危険を及ぼすおそれがあるため、措置の対象となると考えられます 4) 。
違法放置等物件に対する措置では、まず所有者等に措置をするよう監督処分を命じます。
監督処分を命じたものが従わないときや、物件の占有者等が現場にいないために監督処分を命じられないときは、違法放置物件を自ら除去したり、委任した者に除去させることができます。 除去前後の状況は写真等で記録します 4) 。 除去した違法放置等物件は保管します(第2項)。
違法放置等物件を除去した後の保管や公示等の手続きも詳細に定められています(第3項〜第8項)。
1) 提言(平成24年8月、道路の不法占用対策に係る専門部会)
2) 「踏切道改良促進法等の一部を改正する法律案」を閣議決定(平成28年2月2日、国土交通省)
3) 道路法の一部改正について(平成28年9月30日道利第11号、国土交通省 告示・通達一覧)
4) 道路法の一部改正について(平成28年9月30日国道利第13号、 〃 )
5) 道路法の一部改正について(平成28年9月30日路政課事務連絡、 〃 )
不法占用物件に対する監督処分と代執行
物件が損害や危険を及ぼすとは認められないなど、『違法放置等物件に対する措置』で対応できない不法占用物件は、監督処分を行い、それでも改善されない場合は行政代執行により不法占用物件を道路管理者が除却します。 不法占用者が不明の場合は略式代執行が行われます。
屋外広告物条例による簡易除却
『違法放置等物件に対する措置』が制度化される前から、屋外広告物条例を活用している道路管理者もあります。 屋外広告物法には簡易除却といわれる、違法に掲出されたはり紙、はり札等、広告旗、立看板等を行政が除却できる制度があり、道路管理者はこの権限の委任を受けて立看板等を除却することができます(屋外広告物法 第7条第4項)。
屋外広告物条例には広告物の表示等を禁止する区域や物件を定めることができ、違反した広告物については、道路法の監督処分と同様に、都道府県知事等が除却等の必要な措置を命ずることができる規定があるほか(第7条第1項)、次のような制度が設けられています(屋外広告物法 第7条)。
- 相手方が確知できない場合の略式の手続(第7条第2項)
- 代執行要件の明確化(第7条第3項)
(代執行の要件が、行政代執行法より簡略化されている) - 簡易除却(第7条第4項)
簡易除却の制度により、都道府県知事や委任を受けた者は、違法に掲出されたはり紙、はり札等、広告旗、立看板等を除却できます。 国道(指定区間内)などでは、この委任を受けて簡易除却により立看板等の除却することも行われています 5) 。
その他の対応
他の法令で道路占用についての定めがある場合があります(例えば放送法第145条、第174条)。
訴訟手続等により、不法占用期間にかかる占用料相当額を請求する不当利得返還請求や、不法占用者に対して罰則が適用されるよう告発をするという方法もあります。 里道上の不法占用物件については「公共団体ノ管理スル公共用土地物件ノ使用ニ関スル法律(大正3年法律第37号)」が適用されます。
1) 法的要件を欠く道路占用物件の取扱について(昭和33年2月7日道路局長通達、国土交通省告示・通達一覧)
2) 自家用看板等による道路の不法占用の取扱いについて(昭和57年11月9日道路局長通達、 〃 )
3) 自家用看板等による道路の不法占用の取扱いについて(昭和57年11月9日路政課長通達、 〃 )
4) 自家用看板等による道路の不法占用の是正について(昭和63年12月22日路政課長通達、 〃 )
5) 提言(平成24年8月、道路の不法占用対策に係る専門部会)
6) 屋外広告物制度の概要(国土交通省)
7) 屋外広告物(東京都都市整備局)