車両制限と特殊車両の通行許可

 道路を通行できる車両の一般的な制限値は幅2.5m、高さ3.8m、総重量20t等とされています。 それを超える車両を特殊車両といい、道路を通行するときには道路管理者の通行許可が必要です。 道路管理者は、通行経路の道路状況を踏まえて許可をしています。

特殊車両の通行許可制度の概要

道路を通行できる車両の制限

車両の一般的制限値
表−道路を通行できる車両の一般的制限値
2.5m
長さ 12.0m
高さ 3.8m
最小回転半径 12.0m
総重量 総重量20.0t
軸重 10.0t
隣接軸重 軸距により18.0t〜20.0t
輪荷重 5.0t
出典〕道路法 第47条車両制限令 第3条

 道路は、一定の大きさや重さの車両が通行することを想定して作られています。 道路の構造を保全し、交通の危険を防ぐために、それを超える車両の通行は原則禁止されています。

 道路を通行できる車両の一般的な制限値は幅2.5m、高さ3.8m、総重量20t等とされています(各種例外あり)。

制限が緩和されている道路や車両

 指定道路や構造が特殊な車両については、下表のとおり制限が緩和されています。

表−指定道路等
重要物流道路 一部区間の長さの一般的制限値を16.5m、高さの一般的制限値を4.1mとする道路国土交通省HP 1)
国際海上コンテナ
(40ft 背高)
特殊車両通行許可不要区間
国際海上コンテナ車(40ft背高)の一般的制限値を総重量44t、車高4.1m、車長16.5mとする区間国土交通省HP 1)
重さ指定道路 総重量の一般的制限値を車両の長さおよび軸距に応じて最大25tとする道路指定状況 2)
高さ指定道路 高さの一般的制限値を4.1mとする道路指定状況 3)
大型車誘導区間 一般的な制限値を越える大型車の通行を誘導する区間。特殊車両通行許可の許可までの期間が短縮される指定状況 4)
表−構造が特殊な車両の特例
新規格車 高速自動車国道および重さ指定道路を自由に通行することができる。
その他の道路を通行するときは特殊車両の通行許可が必要 2)
トレーラ連結車の特例5車種・追加3車種 特例5車種は道路の種別ごとに総重量の特例が設けられている 2) 5)
セミトレーラ連結車
フルトレーラ連結車
道路種別ごとに総重量および長さの特例が設けられている 2)
トラッククレーン等自走式建設機械 車検証に記載された重量で走行できる。
 1) 重要物流道路制度を契機とした新たな広域道路交通計画について道路行政セミナー 2019.4)、道路法 第3章第8節
 2) 車両制限令の改正について道路行政セミナー 1993.12)、車両制限令 第3条
 3) 車高規制の見直しの実施について道路行政セミナー 2004.3)、車両制限令 第3条
 4) 大型車両の通行を誘導すべき道路の区間の指定等について道路行政セミナー 2014.7)、道路法 第47条の3
 5) セミトレーラ等の積載条件(車両総重量)の見直しについて(平成15年10月1日、国土交通省 報道発表資料)、車両の通行の許可の手続きを定める省令 第2条
個別に制限されている道路
規制標識の画像

高さ制限
(321)

規制標識の画像

重量制限
(320)

 道路管理者が個別に重量や高さを制限している道路は、その制限までの車両しか通れません。〔参考:道路管理者による車両の高さや重量の制限

 道路の幅に応じて通れる車両の幅が定められています。〔参考:道路を通れる最大幅と通行認定

特殊車両の通行確認・通行許可の制度

 上述の一般的な制限を超える車両や構造が特殊な車両で道路を通行するときは、道路管理者の通行の許可が必要です。 この許可を特殊車両の通行許可といい、下表のとおり、大きく分けて2つの制度があります。

表−制度の概要
制度 概要
特殊車両通行確認制度  申請者は、オンラインで車両諸元等、積荷、発着地等を指定して通行可能経路の確認を求めます。
 指定登録確認機関は、道路情報便覧のデータなどに基づいて、通行可能な経路を検索して直ちに回答します。 回答では重要物流道路や大型車誘導区間が考慮されます。
 道路情報が電子データ化されていない道路や、登録基準値を超える車両などには対応していません。
 特車登録センター道路法 第47条の3〜14
特殊車両通行許可制度  申請者は、道路情報便覧などを活用して申請経路を選定します。
 申請経路が一つの道路管理者の道路のみのときは、その道路管理者に、複数の道路管理者にまたがるときは、いずれかの管理者に許可申請をします。
 申請には申請書と通行経路図などの添付書類が必要で、オフライン用プログラムを利用した出力の電子媒体で提出することもできます。 国土交通省や一部の自治体ではオンライン申請ができます。
 特殊車両通行申請手続き道路法 第47条の2
  国土交通省・
都道府県・
政令市への申請
 申請経路に高速自動車国道か指定区間国道を含むときは、国土交通省に申請できます。
 申請経路に指定区間外国道、都道府県道、政令市道を含むときは、当該都道府県政令市に申請できます。
 申請経路に他の道路管理者の道路を含むときは、次のように扱われます。
 ・道路情報便覧に収録されている道路は、申請を受けた道路管理者が代行審査をして回答する。
 ・未収録道路や規格外の車両については、それぞれの道路管理者に照会をして回答する。
政令市以外の市町村への申請  政令市以外の市町村へ申請できるのは、当該市町村道のみです。
 国道か都道府県道、政令市道と政令市以外の市町村道を通行したいときは、国土交通省か都道府県政令市に申請します。 2以上の政令市以外の市町村道を通行したいときは、それぞれの市町村に申請します。

道路情報便覧

 道路情報便覧は、特殊車両の通行の審査を行うために必要となる道路の情報を収録した資料です。 特殊車両が通行すると見込まれる道路の、橋梁、車道幅員、上空障害、曲線部、交差点、屈曲部の情報を、道路管理者が調査して収録しています。

道路管理者の事務

特殊車両の通行許可の事務

 特殊車両の通行許可の申請があったとき、道路管理者は道路の構造と車両の諸元との関係を個別に審査します。 他の道路管理者の道路は、道路情報便覧などで審査ができるときは、申請を受けた道路管理者が代行して審査します。 他の道路管理者の道路が未収録道路であるなど、代行して審査できないときは、他の道路管理者に協議します。 許可をするときは必要な条件を附して許可証を発行し、許可できないときは不許可通知書で通知します。

 審査には各種の定めがあるほか、自治体で事務処理要領を定めている場合もあります 1〜7) 。 事務をする部署を集約して、職場でノウハウが共有できるようにしている道路管理者もあります。

審査

 道路管理者は次のような審査を行います 1)

  • 申請に係る車両の構造又はその車両に積載する貨物が特殊であるためやむを得ないと認められるものであるか否かを審査する。
  • 申請に係る車両について、特殊車両通行許可限度算定要領及び道路情報便覧を使用して審査する。
    電算処理の場合は、その処理の結果に基づいて審査する。
  • 申請に係る車両の諸元が算定要領により算定できる範囲を越えるか、又はその通行経路に係る道路が道路情報便覧に収録されていないものについては、道路交通に与える影響等を考慮のうえ、通行経路に係る道路について個々に道路の構造に与える影響を照査、計算、試験等の方法に基づいて審査する。(個別審査)
  • 申請に係る車両の通行期間等が適切であるか否かを道路の構造及び道路交通に与える影響を考慮のうえ審査する。
  • 申請に係る車両の通行経路に係る道路について長期間にわたり通行の禁止又は制限が実施されているか否かを審査する。

道路情報便覧関係の事務

 特殊車両で通行したい道路が道路情報便覧に収録されていると、特殊車両通行確認制度が使えるなど、申請者にも道路管理者にもメリットがあります。

 通行したい道路が未収録道路のときは、申請者は個別審査のために、路線名や通行経路、出発地、目的地がわかる地図などを添付して申請します。 軌跡図など、追加の資料を求められることもあります。 道路管理者も、道路台帳などで審査できる場合もありますが、道路の現地計測や、橋梁の耐荷力の計算を限られた時間で行うこともあります。 便覧に新たな道路を追加するには相当の手間を要することが多いので、委託により登録データを作成している自治体もあります。

 工事などで収録した道路の交通規制を行うときは、国土交通省に報告をする必要があります。〔参考:特殊車両の道路通行規制情報

重量車が通れるネットワークの充実等

 古い橋梁は重たい車両を通行させるだけの耐荷力がないため、橋の耐荷力補強を行い重量車が通れるネットワークを充実させている道路管理者もあります。 また、分割できない重量物を輸送する企業から、橋梁の補強工事の申し出があったときは、承認工事で対応します。

過積載車両の取締り

台貫所の写真

台貫所(東京都世田谷区)

写真出典〕当サイト撮影(H30.10)

 国土交通省は、道路の劣化に与える影響が大きい重量を違法に超過した大型車両の対策として、悪質な違反者を厳罰化するなどの方針を示しています 1) 。 道路管理者は、車両重量自動計測装置や台貫所(取締基地)を活用して取締りを行っています。

 道路管理者や道路監理員は、基準に適合しない車両を通行させている者に対し、通行の中止や総重量の軽減、徐行その他通行方法について必要な措置を命ずることができます道路法 第47条の14。 これらの規定に違反した者や、使用人が違反したときの法人や法人の代表者には、 罰則が定められています道路法 第103条〜第105条。 悪質な違反者は、許可の取り消しや告発の対象となります。

道路を通れる最大幅と通行認定

規制標識の画像

最大幅の標識
(322)

 幅が一般的な制限値の2.5m以下の車両であっても、狭い道路を通ることはできません。 下表のとおり、車両制限令に道路の幅に応じて通れる車両の幅が定められています。 この制限は、最大幅の標識の有無にかかわらず、制限されます。〔参考:道路管理者による車両の高さや重量の制限

 この制限を超える車両をやむを得ず通行させようとするときには、道路管理者に通行の認定を受ける必要があります車両制限令第5〜7、12条車両の通行の許可の手続等を定める省令 第6条

表−道路の幅と通行できる車両の幅との関係(路肩の幅員が明らかでないとき)
道路の区分 通行できる車両の幅の算式 車両の幅ごとの通行できる道路の総幅 根拠
条項
2.5m幅
の車両
2.0m幅
の車両
1.7m幅
の車両
1.3m幅
の車両














通常の場合の道路 (車道の幅員−0.5m)÷2 6.5m 5.5m 4.9m 4.1m 第5条
第2項
道路管理者が自動車の交通量が極めて少ないと認めて指定した道路又は一方通行とされている道路 (車道の幅員−0.5m) 4.0m 3.5m 3.2m 2.8m 第5条
第1項







通常の場合の道路 (車道の幅員−1.5m)÷2 7.5m 6.5m 5.9m 5.1m 第5条
第3項
道路管理者が自動車の交通量が極めて少ないと認めて指定した道路又は一方通行とされている道路 (車道の幅員−1.0m) 4.5m 4.0m 3.7m 3.3m 第5条
第3項








通常の場合の道路 (車道の幅員)÷2 6.0m 5.0m 4.4m 3.6m 第6条
第2項
一方通行とされている道路又はその道路に概ね300m以内の区間ごとに待避所がある道路 (車道の幅員−0.5m) 4.0m 3.5m 3.2m 2.8m 第6条
第1項
道路管理者が自動車の交通量が極めて少ないと認めて指定した道路 (道路の総幅)−1.0m 3.5m 3.0m 2.7m 2.3m 第9条
※1 この表は、車両制限令に基づいて計算しており、根拠条項は車両制限令の該当条項です。 ※2 通行できる道路の総幅の計算は、歩道等がなく路肩の幅員が明らかでないときを想定して下式で求めています。
   車道の幅員 = 道路の総幅 − 1.0m
  歩道か自転車歩行者道があるときや、路肩の幅員が1m以上あるときは、より広い幅の道路でなければ通行できません。
※3 「市街地区域外の道路」で「道路管理者が自動車の交通量が極めて少ないと認めて指定した道路」に第6条の制限はありません。
  第9条の制限の幅を示しているので、この欄の値は「車両の幅」ではなく「車輪の幅」になります。
表−車両の幅の目安
車両の幅 目安となる車両
2.5m幅の車両 道路を通行できる車両の一般的な制限値の幅は2.5m 1)
多くの10tトラックや大型バスは全幅2.5m弱
2.0m幅の車両 多くの普通乗用車(3ナンバー)は全幅2.0m以下
概ね2tトラック車(標準幅)の車幅は1.9m前後で、2tトラック車(ワイド幅)の車幅は2.2m前後
マイクロバスの車幅は2.1m前後で、コミューターの車幅は1.9m前後 2)
1.7m幅の車両 小型乗用車(5ナンバー)、小型トラック(4ナンバー)の全幅は1.7m以下 3)
1.48m幅の車両 軽自動車(ナンバープレートが黄色)の全幅は1.48m以下 3)
1.3m幅の車両 二輪の軽自動車(軽二輪)は排気量250cc以下で全幅は1.3m以下 3)
原動機付自転車の全幅は1.3m以下 4)
 1) 車両制限令 第3条
 2) 自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う一般的な指導及び監督の実施マニュアル国土交通省 自動車総合安全情報
 3) 道路運送車両法施行規則 別表第一
 4) 道路運送車両の保安基準 第59条道路運送車両の保安基準