道路構造等に起因する事故

 道路の構造や橋梁、ガードレール関連の事故などについて説明しています。
 道路構造関連では、交差点形状や急カーブ、車線減少などが、橋梁関連では、耐荷力不足や幅員減少、高欄の破損や隙間があげられます。 ガードレール関連では、ガードレールが無かったり隙間があったために事故の被害が拡大したもののほか、ガードレールや転落防止柵がないために歩行者や自転車が道下に転落した事故などがあります。

道路構造等に起因する事故

 交差点形状や急カーブ、車線減少などの道路の構造に起因する事故です。

 道路構造令や技術基準を遵守した道路構造であることは、管理瑕疵がないと判断される重要な要素ですが、法令や技術基準を遵守しているというだけでは状況によっては不十分で「通常有する安全性」がなく管理瑕疵があると判断される場合もあり得ます。

 管理瑕疵を問われたか否かを別として、資料に掲載されている裁判例から事故が起きた状況をみると、次のような傾向が見られます 1) 2)

○ 道路構造物が道路の建築限界を侵したことによる事故

 標識や雪崩防止柵が道路の建築限界を侵していたことによる事故と、高さ制限の標識がない高さ3mのトンネルの天井に車両が接触した事故を侵していたことによる事故の裁判例が掲載されていて、道路管理瑕疵が認められています。

○ 道路幅員の減少部での事故

 橋梁の取り付け部などの路肩の幅員が減少する箇所で橋梁に衝突したり、路肩が部分的に狭くなっている箇所から転落をした事故などは、6件の裁判例が掲載されています。 そのうち2件ではスピードの出し過ぎなどによる事故として管理瑕疵がないとされている一方、幅員の減少が解りやすくなっていなかった箇所などでは道路管理瑕疵を問われています。

○ 事業箇所の端部等での事故

 拡幅事業などが行われていて、4車線から暫定2車線に車線数が減ったり、先が拡幅工事現場になっている箇所での事故では、6件の裁判例が掲載されています。 そのうち5件は標識等の設置が十分だったなどの理由で管理瑕疵がないとされています。 1件は車線を絞るガードレールの置き方が不適切だったために道路管理瑕疵が問われています。

○ 道路終端部での事故

 道路の終端部での事故は2件の裁判例が掲載されていて、渡船場や河川で道路が終わりになることが解りやすくなっていなかったとの理由で道路管理瑕疵を問われています。

○ 歩道での事故

 歩道の構造が原因で歩行者や自転車運転者が怪我などをした事故は7件の裁判例が掲載されています。 そのうち、4件の事故では自転車の無謀な運転や歩行者の不注意による事故として管理瑕疵がないとされています。 歩道の切下げの勾配が急で複数の歩行者が転倒した事故、反射テープが巻かれていない車止めに衝突した事故、破損した車止めの金具だけが歩道に突出していたための事故の3件で道路管理瑕疵を問われています。

○ 一般的な車道での事故

 交通事故を起こした人などが、交差点や形状や急カーブを理由に起こした裁判例が26件掲載されています。 通常有すべき安全性は確保されていた箇所での事故など23件は管理瑕疵を認められていません。 中には「原告自身の責任による損害を、本件道路の設置又は管理の瑕疵を主張して市民の税金がその支払原資となる国家賠償に転嫁するような本訴請求は、到底認めることができない(福岡高裁平成18年6月15日)」と判示されているものまであります。

 その一方で、中央分離帯の始まる箇所で分離帯の先端中央部までセンターラインが引かれていたもの(千葉地判昭和47年8月2日)、歩車道境界の縁石がほとんど撤去され2つだけ残っていたもの(東京高裁平成17年3月10日)、河川沿いの変則交差点で河川が解りにくかったもの(広島高裁岡山支部平成3年2月14日)で管理瑕疵を問われています。

広島国道54号中央分離帯衝突事件 (広島地判昭和55年7月24日)
事故箇所の図

○ 事故の概要
 片側部分のみ完成の道路から上下線とも完成している道路へ向けて走行中の乗用車が、完成した道路になる三叉路で中央分離帯の端に衝突し、運転者が死亡した。
 三叉路には安全島が設けられ、安全島とその手前にはデリニエーターやキャッツアイ等の視線誘導施設が設置されていた。

○ 判決の要旨
 瑕疵の有無は、運転者として通常とるべき運転方法に従って運転した場合に、安全性に欠けるところがあったか否かによって判断すべきである。
 運転者が通常とるべき運転方法に従って運転すれば、本件のごとき事故は容易に避け得たので瑕疵はない 1)

 1) 広島国道54号中央分離帯衝突事件道路局 AHSに係る責任関係等に関する研究会

橋梁の不全に関する事故

 橋梁の耐荷力が低下しているのに通行制限をしていなかったり、橋梁部が狭かったり旧橋が撤去されているのに解りやすくなっていなかった場合や、橋梁の高欄などにすきまや破損などの不備があった場合などの事故です。

 管理瑕疵を問われたか否かを別として、資料に掲載されている裁判例から事故が起きた状況をみると、次のような傾向が見られます 1) 2)

○ 橋梁の重量制限が行われていなかったための事故

 橋の重量制限がされていなかったことによる事故の裁判例が2件掲載されています。 橋梁の耐荷力が低下している場合は重量制限の標識の設置が必要です。 2件とも過失相殺はあるものの道路管理に瑕疵が認められています小山市道木橋損壊車両転落事件

○ 橋梁部の幅員減少による事故や、橋梁が撤去された箇所での事故

説明‥の写真

橋梁部の幅員減少を視認しやすくする措置

写真出典〕当サイト撮影(R1.9)

 橋梁部の幅員減少による事故や、橋梁が撤去された箇所での事故の裁判例が10件掲載されています。 そのうち半数では運転ミスなどが事故の原因とされ管理瑕疵がないとされています。 管理瑕疵を認めた判例では、橋の幅員が狭くなっているときは、「橋のかかり口の手前に照明又は遠方から視認できるようなガードレールを設置し、あるいは進路手前に先方で道路が狭くなる旨を予告する道路標識を設置するなどの措置が必要」としています千葉国道16号親柱衝突事件、参考:橋梁の通行止めの実施例

○ 橋梁から転落した事故

 橋梁から車両や歩行者が転落した事故の裁判例は15件が掲載されています。 そのうち半数では運転ミスであったり安全な高欄であったという理由で管理瑕疵を問われていません。 高欄の破損個所から転落した事故などで、7〜8割の過失相殺のもと、管理瑕疵を問われています橋梁歩行者転落事件

小山市道木橋損壊車両転落事件 (東京高判昭和54年7月23日)

○ 事故の概要
 総重量23トンのダンプ車が、制限荷重2トンの木橋を渡ったため橋桁が折れ川に転落し、運転者が負傷した。

○ 判決の要旨
 重量制限の標識の設置、保存は必要不可欠で、それがされていなかったので道路の管理に瑕疵がある。
 重量のある車が同橋を通行する危険を予想するのは困難ではなく、5割の過失相殺をする 1)

 1) 道路管理瑕疵研究会編集、道路管理瑕疵判例ハンドブック、ぎょうせい、2003年、P.276

千葉国道16号親柱衝突事件 (東京地判昭和42年3月27日)

○ 事故の概要
 乗用車が橋の左側の欄干の親柱に衝突して川に転落し、同乗者が死亡した。
 橋の幅員が狭いため、左側の親柱は、車道左側部分のほぼ中央を進行して直進すると、ちょうど正面に突き当たる位置にあった。

○ 判決の要旨
 対向車の前照灯により前方の確認がわずかに遅れたことにより事故の危険がある状況は、安全性の保持に欠けるところがあった。
 状況をあらかじめ認識させうるような設備、すなわち橋のかかり口の手前に照明又は遠方から視認できるようなガードレールを設置し、あるいは進路手前に先方で道路が狭くなる旨を予告する道路標識を設置するなどの措置が必要であった 1)

 1) 道路管理瑕疵研究会編集、道路管理瑕疵判例ハンドブック、ぎょうせい、2003年、P.268

橋梁歩行者転落事件 (福岡地判平成22年8月19日)
事故現場の状況の図

事故現場の状況 1)

○ 事故の概要
 歩行者が橋の南東角から高架下の河川敷に転落して死亡した。

○ 判決の要旨
 現地の状況は次のようだったので、通常有すべき安全性を欠いている。

  • 橋の下は高さ約7mのほぼ垂直の擁壁で、落下すると死傷する危険が高い
  • 地覆の高さは30p
    防護柵の設置基準の転落防止柵の標準高さは1.1m)
  • 親柱とフェンスとの間の隙間は48〜77p
    (基準で望ましいとされている桟間隔は15p以下)
  • 基準の適用前に設置されているため、通達等に違反しているものではない
  • この橋の別の角や近隣の橋の隙間はフェンスやポール、バー等で遮断されている
  • 橋の交通量は多く、様々な人の通行が想定される

 被害者は相当程度酒に酔っていて、注意力や平衡感覚が低下していて事故に至ったため、8割を過失相殺する 1)

 1) 訴訟事例紹介 橋の欄干と川沿いの道路に設置された金網フェンスとの間から落下した事故について、道路の管理瑕疵が争われた事例道路行政セミナー 2012.5

ガードレールの不全に関する事故

 ガードレールが無かったり隙間があったために事故の被害が拡大したもののほか、ガードレールや転落防止柵がないために歩行者や自転車が道下に転落したもの、ガードレールに衝突した事故です。

 ガードレールの設置の要否については、『防護柵の設置基準』がありますが、判例では『道路の安全性の判断にあたっては、法令上の安全基準のみならす通常予想される危険を防止し得るか否かをも考慮すべき(仙台高判昭和56年12月19日)』として個別的具体的に判断されています。 また、過失相殺をされていない事件が見当たらず、最大8割5分と大幅な過失相殺をされている事件が多いという特徴があります。

 管理瑕疵を問われたか否かを別として、資料に掲載されている裁判例から事故が起きた状況をみると、次のような傾向が見られます 1) 2)

○ ガードレール等が設置されていない箇所での事故

説明‥の写真

転落防止柵

写真出典〕当サイト撮影(R1.5)

説明‥の写真

歩道幅員減少部に設けられた転落防止柵

写真出典〕当サイト撮影(R1.11)

 ガードレール等が設置されていない箇所での事故の裁判例は34件が掲載されています。

 自動車などの事故は15件が掲載されていて、そのうち8割の事故ではガードレールの設置の必要性が認められないとして、管理瑕疵がないとされています福井県道ガードレール不備車両衝突事件

 大人の歩行者や自転車がガードレール等がない箇所で道下に転落をした事故は14件が掲載されていて、その半数は管理瑕疵がないとされています。 管理瑕疵が認められた事故としては、道路が途切れた地点から用水路や河川に転落した事故(高知地判平成9年6月18日、最高判平成14年3月12日)や、溢水のため路面と識別不可能の用水路に転落した事故(奈良地判昭和57年3月26日)などがあります。 なお、蓋が無いために用水路等に転落した事故は、「側溝等の蓋不全に関する事故」に掲載しています。

 子供がガードレールがない箇所などから転落をした事故は5件が掲載されていて、そのうち3件で管理瑕疵が問われています神戸市道防護柵不全児童転落事件

○ ガードレールの隙間から転落した事故

 ガードレールの隙間から転落した事故の裁判例は5件が掲載されています。 そのうち、3件では管理瑕疵がないとされ、切れ目が広く開いていて転落した事故(大阪地判昭和52年6月30日)など2件で管理瑕疵が問われています。

○ ガードレールに衝突した事故

 ガードレールに衝突した事故の裁判例は5件が掲載されています。 そのうち3件では管理瑕疵がないとされ、ガードレールのエンドポスト(端部の支柱)が見えにくく衝突した事故(長野地判昭和48年6月29日)など2件で管理瑕疵が問われています。

福井県道ガードレール不備車両衝突事件 (名古屋高裁金沢支判昭和53年10月18日)

○ 事故の概要
 ガードレールのないカーブで路外に転落して、同乗者が死亡した。

○ 判決の要旨
 事故現場の安全施設として、視線誘導標やカーブミラーなどが設置されており、通常備えているべき安全性は確保されている。
 防護柵設置基準は、より高度な安全性を目指したものであるから、基準によれば設置が相当とされている箇所に設置されていなかったからといって、道路の管理に瑕疵があるとは言えない。
 本件事故は、運転上の重大な過失等によって引き起こされた 1)

 1) 道路管理瑕疵研究会編集、道路管理瑕疵判例ハンドブック、ぎょうせい、2003年、P.322