サイトの目的

 このサイトは、道路の仕事のいくつかを取り上げて、その仕事に関わる法律や技術基準、道路管理者毎に異なるサービス水準の考え方や事例、設計や施工などの情報を横割りで示しています。

 道路の仕事は、膨大な法律や基準などに加えて、その地域や道路の特性など様々なものを踏まえて進める必要があります。 それらの多くは、例えば法令であったり基準であったりという縦割りで整理されています。

 そのため、若手が自分の仕事の根拠を見つけられずに前例踏襲で仕事を進めざるを得なくなったり、ベテランがどこに情報があるのか思い出せずに的確なアドバイスができなかったり、新たな課題が生じたときに判断基準が解らず将来に禍根を残す対応をしてしまったりというような問題が生じます。

 このサイトは、若手が仕事の背景を理解して自信をもって仕事を進められるようになり、ベテランが根拠資料を簡単に見つけて若手の指導ができるようになり、新たな課題に対応する際に考慮すべき事項が整理され検討がスムースにできるようになればと思い立ち上げました。

道路の仕事をするときに知っておくべきこと

法律や技術基準

 道路の仕事は公の仕事であるため、法律や規則に則って行います。 道路の仕事に関係する法律は、道路法に加えて、道路の整備を促進するための法律や、交通バリアフリー法のような道路の整備にかかる法律などがあります。 また、主要な技術基準も法律に基づいて定められています。

サービス水準と道路管理瑕疵

 例えば、路面清掃を何回行うのかというようなサービス水準を決める際には、まず、最低限、道路が通常有すべき安全性を確保する必要があり、道路管理瑕疵の裁判例や賠償事例を踏まえる必要があります。 そのうえで道路管理者ごとに地域の実情や予算、人員の制約を踏まえてサービス水準が決められています。

工事の設計施工

 道路工事を行う際、発注者は設計基準等によって設計をし、積算基準等によって予定価格を定め、受注者は設計図書や各種仕様書に基づいて現場を施工します。 このときは、工事に対するノウハウも必要です。

今の道路の仕事

 これらの基準等は、本棚のひとつには入りきらないぐらい膨大な量になっています。 それに加えて、普段の業務は、なにかの計画や工事であるのに対して、基準類は道路の法規、技術や設計積算の基準、現場の施工と縦割りになっています。

 その結果、若手や道路の仕事に慣れていない人は、自分の仕事に関係する事柄がどこに記載されているのかを見つけられず、ルーチンワークで日々の仕事はこなすものの、仕事の背景を理解していないために自信をもって仕事を進められないとか、もっと良くしたいと思っても、判断の基準が解らないために今までのやり方を変えられないという状況に陥りやすいように見受けられます。

 また、新たな課題が生じたり、住民から要望を受けたときに、どのような背景で今に至っているのかが理解できていないために、どう対応すれば良いのかの判断が適切にできず、将来に禍根を残す対応をしてしまっている事例も見受けられます。

ひと昔前の道路の仕事

 ひと昔前、少し大きな組織で道路の仕事をしている職場は、今より明るい雰囲気だったような気がします。 なにが違うのかと考えてみると、昔は、道路の仕事はそれほど難しくなく、『道路の○○の生き字引』と言われるような人が何人かいて、自分が抱える仕事について尋ねると、その背景から進むべき道筋までを示してくれて、先行きを見通して仕事にあたれました。 土木が経験工学だと言われる理由は、こういうところにあったのかもしれません。

 昔は、『生き字引』と言われるような人が大勢いたのに、今はなぜ少なくなってしまったのかと考えると、いくつかの変化が思い浮かびます。

法令等の改正頻度

 昔は、今ほど頻繁に法令や技術基準が変わることはありませんでした。

 そのため、自分が関心のある分野の専門書を数冊職場において置き、判断に迷う問題が生じたときに専門書を見る習慣をつけ、新しい動きがあったときに、そのコピーを取っておくというようなことを数年続けていれば、生き字引のタマゴになれました。 その後は、その分野の相談事が次々に持ち込まれるので、自然とその分野に詳しくなり、的確なアドバイスもできるようになりました。

 今は、法令が頻繁に変わったり新たな法令が定められたりと変化が激しいため、それを追いかけるだけでも大変で、昔の判断が今でも通用するのかという迷いも生じるようになり、人にアドバイスをするハードルが高くなってしまいました。

サービス水準

 バブルになるまでの間、道路関係の予算は厳しいものでした。 当時は、サビだらけの横断歩道橋をいくつも見かけました。 横断歩道橋の塗り替え塗装の予算が充分に措置できないために、いちばんひどいところから塗り替える以上のことができなかったためです。

 当時は、限られた予算をやりくりして道路が通常有する安全性を確保しようといていたため、サービス水準を考えるときに、道路管理瑕疵を問われるか否かを意識していました。 このため、多くの道路管理者のサービス水準がほぼ同じで、工事も最も低廉な画一的な対応が多かったと思います。

 今は、住民の様々な要望や道路の特性を踏まえて、道路管理者ごとにサービス水準を決めているため、道路管理者によってサービス水準が異なり、地域の状況を踏まえた様々な対応が行われています。

分業化

 昔は直営作業が多く、一つの課題にじっくり取り組む時間が与えられていました。 例えば、事業者が直営で道路線形を決めていたときは、こういう線形を入れると用地の担当者が苦労するだろうなとか、こういう線形にすると運転がしにくいだろうなと考えながら試行錯誤をする時間がありました。

 今は、いくつもの仕事を抱えるなかで、コンサルタントに線形設計の計画与条件を示し、あがってきた線形をチェックするという仕事の進め方が主流だと思います。

 その結果、昔は2回ぐらい同じ事柄を担当すれば、その事柄に詳しくなったのに対して、今は、打ち合わせなどに相当気を付けて望まないと、必要なノウハウが身につかないままに仕事が進んでしまいます。

地域の情報

 昔は、この道路の工事は数十年来うちの会社でやってきました。 だから、去年の工事をする際に、今年工事をするであろう区間も良く見ていて、こんな問題に気付いています。 数十年前に道路を新設した際にこういう問題があって変わった形の道路になっているので、再整備をするときには注意が必要です‥‥ というようなノウハウが建設会社に残っていました。

 また、発注者側の職員も、長く同じ地域を担当していた人がいたので、どこはどういう経緯でどうなっているというノウハウが残っていました。

 今は、建設会社が限られている地域を除けば、発注者と受注者は工事ごとに甲乙の関係になるだけで、職員も転勤が多いので、地域の特性に踏まえたノウハウの継承も難しくなっています。

このサイトの目的

 道路の仕事は年々高度化し、昔のように職場のなかでアドバイスをしあって仕事を進めることが難しくなっています。

 道路のことを勉強しながら仕事をしようとしたときには、『道路の法規』『道路の技術基準』『道路の設計積算』『道路工事の施工』といった縦割りのなかに優れた書籍や参考文献が多くあり、それらを一つ一つ勉強していかなければ良い仕事はできません。

 しかし、今、目前にある仕事をしなければいけないときには、それらをじっくり調べる余裕はないと思います。 そこで、このサイトでは、道路の仕事をしている人に向けて、次の三つを目的に情報を提供したいと思います。

 第一に、まだ道路の仕事に慣れていない若い人に向けて、いくつかの仕事をピックアップして、それに関係する法規や基準から施工方法までを紹介していきます。 若い人が現に取り組んでいる仕事の背景や全体像を把握して、安心して自信をもって仕事を進められるようになればと思います。

 第二に、ベテランの人でも、前にみた根拠がなかなか見つけられないということが多いと思います。 法令や基準に対するリンクを充実していきます。

 第三に、小さな話では住民要望や担当者の気づきによって、大きな話では首長の施策などによって、道路のある部分のサービス水準を見直すことがあります。 サービス主準の見直しに必要な前提条件や他の道路管理者の取組みを紹介することで、より適切なサービス水準の設定のお手伝いをしたいと思います。

 なお、サイトの構成にあたっては、細心の注意を払っていますが、誤りや見落としに気づいたときは、メールなどで知らせてください。