道路の除雪

 道路の除雪は、通行可能な道路ネットワークを確保したり、旅行速度を保つことで、安全で円滑な冬期交通の確保を図るために行われています。 作業として、凍結防止剤散布、車道の新雪除雪、路面整正、拡幅除雪、運搬排雪、圧雪処理や歩道除雪などが行われています。

道路の除雪の根拠

 除雪は、道路法第42条を根拠に行われています。  道路法第42条に『道路管理者は、道路を常時良好な状態に保つように維持し、修繕し、もつて一般交通に支障を及ぼさないように努めなければならない。』と定められています道路法 第42条

 同条第2項で『道路の維持又は修繕に関する技術的基準その他必要な事項は、政令で定める。』とされており、道路法施行令第35条の2第1項に『道路の構造、交通状況又は維持若しくは修繕の状況、道路の存する地域の地形、地質又は気象の状況その他の状況を勘案して、適切な時期に、道路の巡視を行い、及び清掃、除草、除雪その他の道路の機能を維持するために必要な措置を講ずること。』と定められ、除雪が法律上の義務として明示されています。

 また、雪寒法の積雪寒冷特別地域の指定道路では、国庫補助等を活用して充実した除雪が行われています。

道路の除雪の目的

 除雪は、「安全で円滑な冬期交通の確保を図り、大規模な通行止めが生じないよう、また、一定程度の旅行速度が保たれるよう 1) 」行われています。

 一例として、奥羽山脈を越える国県道では、国管理の4路線全てと、県管理20路線のうち6路線が除雪され、道路ネットワークが一応確保されています。 また、北海道、東北、北陸の交通量常時観測地点では、日降雪量が10cm以上あっても、旅行速度は91%に保たれています 2)

一般国道(指定区間)の除雪

 国土交通省は『国道(国管理)の維持管理等に関する検討会』の議論等を踏まえ、『国が管理する一般国道及び高速自動車国道の維持管理基準(案)(平成25年4月)』を定めました。 また、各地域整備局等は、維持管理基準に基づいた『道路維持管理計画書』を公表しています。

 これらでは、特別な事情がある場合を除き、安全で円滑な冬期道路交通の確保を図り、大規模な通行止めが生じないよう、また、一定程度の旅行速度が保たれるよう、新雪除雪、路面整正、拡幅除雪、運搬排雪、歩道除雪、凍結防止剤散布を行うこととしており、その内容は除雪の種類毎に下記に示すとおりとなっています。

 特に、大雪時もしくは大雪が予想される場合には、道路の状況を確認の上、新雪除雪の基準よりも早期の除雪に出動すること等により適時適切な除雪作業を実施することとしています。 また、必要に応じ、都道府県警察等の関係機関との連携や必要な協議を行い、チェーン規制や、早い段階での通行止めを行った上での集中的な除雪等の措置に努めることとしています。

凍結防止剤散布

 凍結防止剤散布は、路面上の雪の凍結を防ぐため、凍結防止剤を散布する作業です。

 凍結防止剤は、塩化ナトリウムや塩化カルシウムなどが使われます。 水は0℃で凍りますが、凍結防止剤を散布すると凝固点が下がるので、路面上の水分の凍結を防いだり、路面上の氷を溶かしたりします。 なお、温度が低くなるほど凍結防止剤の散布効果が低くなっていくため、気温が低い場合(概ね-8℃より低い場合)や降雪頻・降雪量が多く、路面への堆雪が厚い場合などにはすべり止め材(焼砂と砕石)が散布されています 3)

 雪国では、凍結防止剤散布車などで一様に散布されています。 温暖な地域などでは、車載の散布機や人力などで、凍結をしやすい橋梁、トンネルの坑口、日陰部、湧水がある箇所などや、スリップの影響が大きい急カーブや急坂などにのみ散布をしている場合もあります。 また、住民が散布できるよう砂箱などに備え置いている場合もあります。

 国土交通省では、「路面の凍結が発生しやすく、安全な通行に与える影響等が大きい区間を対象とし、路面凍結が予想される場合に実施するものとする。 散布材料は塩化ナトリウムを基本とし、散布量は20g/m2程度を目安として、対象区間の状況に応じた散布量を適宜設定する。1) 」としています。

凍結防止剤散布の図表

凍結が予測される路面

凍結防止剤散布の図表

凍結防止剤の散布作業

凍結防止剤散布の図表

作業後の路面

図表出典〕国土交通省 建設施工・建設機械 HP

https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/kensetsusekou/seibi/josetu/touketuboushi.pdf

新雪除雪

 新雪除雪は、走行車線に積もった新雪を除雪トラックや除雪グレーダなどの除雪機械で路側に寄せる作業です。 除雪機械が少ない温暖な地域では、汎用のホイールローダなどが使われています。

 新雪は雪が軽くて柔らかく、走行車両により圧縮されたり乱されていることも少ないため、比較的高速な除雪が可能です。 深夜から通勤・通学時間帯の前までに除雪が行われることが多いようです。

 国土交通省では、「5cm〜10cm程度の降雪量を目安として、気象条件、交通状況等を勘案し、道路交通に支障をきたすおそれがある場合に実施する。1) 」としています。

新雪除雪の図表

降雪により路面に降り積もった雪

新雪除雪の図表

除雪トラックや除雪グレーダによる作業

新雪除雪の図表

新雪除雪された路面

図表出典〕国土交通省 建設施工・建設機械 HP

https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/kensetsusekou/seibi/josetu/shinnsetu.pdf

路面整正

 路面整正は、路面に残された雪の凸凹や不陸、わだちなどを除雪グレーダなどのエッジにより削り取って、路面を平坦にし、削った雪を路側に寄せる作業です。

 国土交通省では、「連続降雪による圧雪成長や路面残雪により、放置すると道路交通の確保が困難な状態となるおそれがあり、路面の平坦性を確保する必要のある場合に実施する。1) 」としています。

路面整正の図表

凹凸になった路面

路面整正の図表

除雪トラックや除雪グレーダによる作業

路面整正の図表

路面整正された路面

図表出典〕国土交通省 建設施工・建設機械 HP

https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/kensetsusekou/seibi/josetu/romenseisei.pdf

拡幅除雪

 拡幅除雪は、連続した除雪作業により路側の雪堤が大きくなり必要な車道幅員が確保できなくなったときや、引き続く降雪に備えて堆雪幅を確保するために、雪堤の裾の雪を掻きとって雪堤の上に積み上げたり、ロータリ除雪車などで外側に放雪する作業です。

 国土交通省では、「堆積した雪により必要な車道幅員及び堆雪幅が確保されておらず道路交通に支障をきたすおそれがある場合、又は新雪除雪の実施が困難な場に実施する。1) 」としています。

拡幅除雪の図表

路側に堆積した雪

拡幅除雪の図表

ロータリ除雪車や除雪ドーザによる作業

拡幅除雪の図表

拡幅された車道

図表出典〕国土交通省 建設施工・建設機械 HP

https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/kensetsusekou/seibi/josetu/kakuhukujosetu.pdf

運搬排雪

 運搬除雪は、市街地、狭い道路、交差点、橋梁、トンネル出入口などで 2) 、『拡幅除雪』が困難となった場合などに、雪堤をロータリ除雪車などで切り崩しダンプトラックに積み込んで雪堆積場や雪捨て場などに運び出す作業です。

 国土交通省では、「堆積した雪により必要な車道幅員の確保が困難となり、引き続き降雪の増加が予想され、かつ道路交通に支障をきたすおそれがある場合に実施する。1) 」としています。

運搬排雪の図表

路側に堆積した雪

運搬排雪の図表

ロータリ除雪車による排雪作業

運搬排雪の図表

排雪後の状況

図表出典〕国土交通省 建設施工・建設機械 HP

https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/kensetsusekou/seibi/josetu/kakuhukujosetu.pdf

圧雪処理(氷盤処理)

 圧雪処理や氷盤処理は、通常の除雪では取り除けない、路面上に成長した圧雪または氷盤を除去又は削整する作業です。 専用機械による除去作業のほか反復作業となることが多い作業です。

歩道除雪

 歩道除雪は、歩道に降り積もった雪を、小型ロータリ除雪車などで車道側に積み上げる作業です。

 国土交通省では、「必要な区間において、歩行者の通行に支障をきたすおそれがある場合に実施する。1) 」としています。

歩道除雪の図表

歩道に積もった雪

歩道除雪の図表

小型除雪車による作業

歩道除雪の図表

除雪された歩道

図表出典〕国土交通省 建設施工・建設機械 HP

https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/kensetsusekou/seibi/josetu/hodou.pdf

高速道路の除雪

 高速道路でも、路面凍結が予想される場合の凍結防止剤の散布や、路面に積雪が生じた場合の除雪トラックなどによる除雪が行われています。 また、これらの雪氷対策作業にあわせて、交通管理者と調整して速度規制やチェーン規制などの交通規制や、情報提供などを行っています4)

自治体の道路の除雪

 『冬期道路交通の確保のあり方に関する検討委員会』では、集中的な降雪の増加、財政状況などの行政対応の限界、地域の建設業の体力低下などの状況を踏まえ、除雪路線の選定、除排雪作業基準の設定、豪雪時の優先順位つけなどをしていく必要があるとしています。

 国県道で除雪を行わず冬期に通行止めとなる区間は、峠部を中心に全国で943区間設定されています(平成23年) 2) 。 また、市町村においても、例えば一定幅員以上の道路を除雪対象とするなど、除雪を行う路線を公表している自治体が多くあります。

 また、下表の設定例のように除排雪作業の基準を設定している自治体や、大雪時の優先除雪ルートを、例えば『緊急輸送路(第1次)、高速道路、国道、ICアクセス道路』としている自治体などがあります 5)

表−除雪作業の出来型(幅員確保)の設定例
区分 日交通量の
おおよその基準
除雪目標
第1種 1,000台/日以上 2車線以上の幅員確保を原則とし、異常な降雪時以外は常時交通を確保する。
第2種 500〜1,000台/日 2車線幅員確保を原則とするが、状況によっては1車線幅員で待避所を設ける。
第3種 500台/日未満 1車線幅員で必要な待避所を設けることを原則とする。
図表出典〕第2回冬期道路交通の確保のあり方に関する検討委員会配布資料
表−新雪除雪作業の出動基準に関する設定例
区分 一次除雪の出動の基準 主な対象区間
重点区間 新たな積雪が概ね5〜10cm 市街地を中心とする交通量の多い幹線道路
交通量の多い幹線道路で、勾配がきつい峠区間
一般 新たな積雪が概ね10〜15cm 上記をのぞく全ての路線
図表出典〕第2回冬期道路交通の確保のあり方に関する検討委員会配布資料

除雪の積算

 「国土交通省土木工事積算基準」の道路除雪工の施工フローは下記を標準としています。 一般除雪(新雪除雪、拡幅除雪、路面整正、圧雪処理(氷盤処理))・運搬除雪・歩道除雪・凍結防止、スノーポール設置撤去、雪道巡回工、待機費の歩掛りが示されています。

施工フロー

 一般除雪・運搬除雪・歩道除雪・凍結防止の各作業量の算定は,除雪機械等の実作業時間によることとされています。

 凍結防止剤の散布量は過去の実績を基に推定し、過去の実績の無い場合は,20〜40g/m2 程度を標準とし,実散布量で精算を行うものとされています。

除雪の機械

 「国土交通省土木工事積算基準」では、各工種の作業形態は,次表を標準としています。

表−作業形態
工種 作業条件 作業形態
新雪除雪 幅員の狭い場合 除雪トラック,除雪グレーダによる単独作業が多い。
幅員の広い場合 除雪トラック,除雪グレーダによる単独作業及び1 台で所定幅員が確保出来ない場合は除雪トラック,除雪グレーダによる雁行組合せ作業が多い。(当該地域の保有台数及び地域条件により規格を使い分ける。)
拡幅除雪 雪堤の低い場合 除雪トラック,除雪グレーダによる単独作業が多いが,新雪除雪作業と兼ねて行う場合は雁行作業もとられる。
雪堤の高い場合 除雪トラック,除雪グレーダのサイドウィングによる単独の雪堤段切作業がとられる。
また,ロータリ除雪車による放雪作業が多いが除雪トラック,除雪グレーダのサイドウィング(マックレー法)とロータリ除雪車の組合せ作業もある。なお,山間部等の特殊な場合は除雪ドーザの作業もある。
路面整正 除雪グレーダによる単独作業が多い。
新雪除雪,拡幅除雪と兼ねて行う場合は除雪グレーダ,除雪トラックと組合せて雁行作業も行う。
運搬除雪 積込障害の多い場合及び歩道の排雪も兼ねて行う場合等は堆積の切崩集雪用補助機械として除雪グレーダや除雪ドーザが組合される場合が多い。
捨場の状況に応じて除雪ドーザやロータリ除雪車を配置する場合がある。
また,幅員が狭い場合,又は交通量の特に多い場合は一車線積込除雪車による一車線積込方式がある。
歩道除雪 小型除雪車等を歩道上に直接乗り入れて行う方法が一般的である。
小形除雪車の写真

小形除雪車(1.5m級)

写真出典〕北海道開発局網走開発建設部(リンク切れ)

除雪の施工基準

 国土交通省の『土木工事共通仕様書(案)(平成27年3月、国土交通省)』の『除雪工』では、一般除雪工、運搬除雪工、凍結防止工、歩道除雪工、安全処理工、雪道巡回工、待機補償費、保険費、除雪機械修理工その他これらに類する工種について定めています。

 国土交通省の『写真管理基準(案)(平成27年3月、国土交通省)』では、『排雪除雪』と『凍結防止剤散布』について定めています。 『凍結防止剤散布』の写真管理項目を、撮影項目は出来ばえ、撮影頻度[時期]は施工中に1回 施工中と、撮影項目は材料使用量、撮影頻度[時期]は全数量〔施工前後〕、提出頻度は適宜としています。

 国土交通省の『地方整備局工事成績評定実施要領(H25.3.25最終改正)』では、維持工事の評価対象項目を次のようにしています。

工事成績評定の考査項目別運用表で維持工事(清掃工、除草工、付属物工、除雪、応急処理等)の評価対象項目とされている項目
  • 使用する材料の品質・形状等が適切であり、かつ現場において材料確認を適宜・的確に行っていることが確認できる。
  • 構造物の劣化状況をよく把握して、適切な対策を施していることが確認できる。
  • 監督職員の指示事項に対して、現地状況を勘案し、施工方法や構造についての提案を行うなど積極的に取り組んでいることが確認できる。
  • 緊急的な作業において、迅速かつ適切に対応していることが確認できる。