清洲橋は清洲橋通りが隅田川を渡る橋で、関東大震災の復興で昭和3年に架けられました。 隣の永代橋が上向きのアーチ曲線を描くのに対して、清洲橋は繊細で優美な下向きの懸垂曲線を描く吊り橋で、材料、構造形式、工法に当時の最先端の技術が駆使されていて、重要文化財に指定されています。
清洲橋の諸元等
清洲橋
図表出典〕東京都、東京都の橋、2005、P.14
清洲橋(きよすばし)は、清洲橋通りが隅田川(すみだがわ)を渡る橋梁で、関東大震災の復興事業で内務省復興局が新設し、東京市に移管した鋼自碇式(じていしき)補剛吊橋で、重要文化財に指定されています 1) 2) 。
- 橋梁名 ‥ 清洲橋
- 道路名 ‥ 清洲橋通り(都道474号浜町北砂町線、補助第111号線)
- 所在地 ‥ 東京都中央区日本橋中洲(なかす)〜江東区清澄(きよすみ)一
- 開通年月日 ‥ 昭和3年(1928)3月15日
- 橋長×有効幅員 ‥ 186.2m×22.0m
- 形式 ‥‥ 鋼自碇式補剛吊橋
1) 清洲橋(歴史的鋼橋集覧)
2) 清洲橋(国指定文化財等データベース 文化庁)
清洲橋の建設
清洲橋の横景
写真出典〕当サイト撮影(R2.7)
清洲橋の橋上
写真出典〕当サイト撮影(R2.7)
清洲橋は、関東大震災の復興計画で現在の補助第111号線にあたる道路が新たに計画されたために新設された橋です。 永代橋に続く隅田川の第二橋梁であることから、永代橋の凸型のアーチ曲線と対照する凹型となる吊橋で、ドイツのケルン吊り橋をモデルに造られました。
基礎は地盤が悪いため、永代橋と同様に平均潮位下約23〜28mのニューマチックケーソン(潜函)が採用され、永代橋での施工経験を活かして日本人技術者によって施工されています。 橋脚と橋台は鉄筋コンクリート造で花崗岩で化粧がされています。
上部構造は、一般の吊り橋はケーブルをアンカレイジに定着しますが、清洲橋では橋詰にスペースが必要なことや地震動に好ましくない影響があることから、橋桁の両端に定着して下部構造に水平反力が伝わらない自碇式となっています。 また、吊鎖にはケーブルではなく、当時海軍が開発していた高張力鋼を用いたチェーン部材を用いて材料断面を小さくしています。 橋脚上の支塔は、高さ20.3mの箱形の鋼柱で上端に吊鎖を固定して下端は球面支承で橋長の方向に回転する構造になっています。 吊材は、スリーブやナットで伸縮させられる丸鋼が用いられています。
清洲橋は隅田川の復興橋梁のなかで最も事業費が高かった橋梁で、繊細で優美な懸垂曲線を描く姿は、永代橋が男性的、清洲橋が女性的と対比されています 1) 2) 3)。
- 清洲橋 世界の美橋(鉄の橋百選−近代日本のランドマーク)
- 昭和初期を代表する吊り橋 東京・清洲橋(橋梁調査会 J-BECレポート、2010、Vol.5)
1) 帝都復興事業誌 土木篇(上巻)(昭和6年、国会図書館デジタルコレクション、P.344)
2) 復興橋梁資料室(Bridge Watching)
3) 橋梁設計図集 第二輯 清洲橋(復興局土木部橋梁課編、シビル社、昭和3〜4年発行、土木学会図書館)
4) 橋梁設計図集 第二輯 清洲橋 設計図(復興局土木部橋梁課編、シビル社、昭和3〜4年発行、 〃 )
5) 清洲橋上部構造架設工事(相馬 龍雄、土木建築工事画報、第4巻第6号、1928)
6) 震災復興橋梁工事写真 5.清洲橋工事(土木学会附属土木図書館)
重要文化財指定等
清洲橋は、平成19年(2007)6月に、永代橋、勝鬨橋とともに重要文化財に指定されました。
重要文化財の指定基準のなかでは、『意匠的に優秀なもの』及び『技術的に優秀なもの』とされ、解説文では、『清洲橋は,内務省復興局が探求した力学的合理性に基づく近代的橋梁美を実現している。また,材料,構造形式及び工法に当時の最先端技術を駆使しており,昭和初期を代表する吊橋として重要である。』とされています 1) 。
景観デザインとしては、『当時世界最美の橋とされたドイツケルン市の大吊り橋をモデルにした我が国初の自定式吊橋。 海軍で研究中であった低マンガン鋼(デュコール鋼)をチェーンに使用するなどチャレンジもなされた。 橋梁群の考え方に於いて規範的な事例。』との評価も受けています 2) 。
竣工後の改良等
景観整備では、著名橋整備事業で昭和60年度(1985)から平成3年度(1991)にかけて、床版の補修・打換えと歩道の御影石による舗装や、橋詰めの緑化などが行われています 1) 2)。
耐震補強・長寿命化では、平成26年度(2014)に支承の移動制限装置や制振ダンパーなどが設置されています 3) 4)。
清洲橋のライトアップ
写真出典〕当サイト撮影(R4.5)
ライトアップは平成3年度(1991)に整備されましたが、令和2年(2020)8月にチェーンケーブルの上部は白色光で下部は温白色と、光の色味に変化をつけて主塔の高さを強調したものにリニューアルされました 1) 5) 6) 。
1) 歴史的鋼橋の保存の目的と補修・補強技術に関する研究(永田礼子、佐々木葉、土木史研究講演集、Vol.24、2005年)
2) 1985.03.06 : 昭和60年_第1回定例会(第3号) 本文 (東京都議会会議録検索)
3) 供用下にある歴史的土木構造物に関する調査(五十畑弘、土木学会論文集D2(土木史)、72巻 (2016) 1号 p.20-39)
4) 重要文化財(建造物)耐震診断・耐震補強の手引(改訂版)事例集 48 永代橋・清洲橋(文化庁)
5) 隅田川に映える橋のライトアップ(東京都建設局)
6) 隅田川橋梁群のライトアップ点灯開始(第3弾)( 〃 )
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