鉄筋コンクリートの橋や部材を補修補強する工法の選定にあたっては、劣化の原因や状況、今後の劣化の進行や工事中の交通影響など、様々な要因を踏まえて、特定の工法を選定したり、複数の工法の組み合わせます。
工法選定のために、いくつかの道路管理者の設計要領を紹介するとともに、どのような工法が選定されるのかを紹介しています。
鉄筋コンクリート床板の補修補強工法選定
いくつかの道路管理者が公表している設計要領等に示されている、鉄筋コンクリート床板の劣化損傷に対する補修工法や補強工法の選定パターンを下表に示します。 各要領ともに、オーソドックスな補修工法や補強工法を組み合わせて選定することが多くなっています。 下表にある補修工法や補強工法がどのようなものかは、『RC橋、RC部材の補修補修事例』のページに示してあります。
なお、工法の選定は、条件によって異なってくるため、安易に他の事業者の要領を横引きすることは好ましくありません。 工法選定は、損傷原因や交通環境、長寿命化計画を踏まえて行います。 床板の損傷原因についてみると、積雪寒冷地以外では、疲労によるひび割れの進行が補修や補強を必要とする主な原因となるのに対して、積雪寒冷地では塩害や凍害で床板上面の損傷が大きい場合もあります。 通行止めの影響は、都市間の幹線道路と、ネットワークの充実した都市内や交通量の少ない道路では大きく異なります。 長寿命化計画で、事業者毎に補修や補強をする橋梁の優先度を踏まえて、対処療法的な補修にとどめるのか、予防保全的な補強までを行うのかを整理しています。 実際に補修や補強を行う際には、その組織の設計要領等がないか確認し、なければ以上の状況を踏まえた判断をすることが必要です。
地方整備局 | 自治体 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
東北 1) | 北陸 2) | 中国 3) | 四国 4) | 九州 5) | 福島県 6) | 山梨県 7) | 静岡県 8) | 愛知県 9) | |
緊急対策 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |||||
橋面防水工法 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
ひびわれ補修工法 (表面処理工法、注入工法、充填工法) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
表面保護工法 (表面被覆工法、表面含浸工法) | 〇 | 〇 | |||||||
断面修復工法 (左官工法、モルタル注入工法、吹付け工法) | 〇 | 〇 | 〇 | ||||||
剥落防止工法 | 〇 | 〇 | |||||||
連続繊維シート接着工法 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
鋼板接着工法 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||||
床版下面増厚工法 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
床版上面増厚工法 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
増桁架設工法 (縦桁増設工法) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
床版打替工法・床版取替工法 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
橋の耐荷力補強の工法選定
平成5年(1993)に車両制限令が改正され、高速自動車国道と道路管理者が指定した重さ指定道路では車両総重量25tの新規格車が、その他の道路では20tの車が走行できます。
橋の設計に用いる活荷重は、平成5年(1993)の道路橋示方書改訂で一等橋二等橋の区分が廃止され25t車を想定したものへ改訂されましたが、それ以前は、昭和31年(1956)の示方書では一等橋20t、二等橋14t、昭和14年(1939)の示方書では一等橋13t、二等橋9tでした。
耐荷力の不足が一因で橋の損傷が生じているため、重さ指定道路を中心に計画的に橋の耐荷力補強が行なわれており、その設計要領を公開している道路管理者もあります。
- 設計施工マニュアル(案) [道路橋編] 第8編 第3章 耐荷力補強設計(旧版、平成28年3月、東北地方整備局)
(令和5年3月版は耐荷力補強設計が削除されています) - 佐賀県橋梁補修・補強マニュアル(案) 第6章 §2. 耐荷力補強(平成27年5月、佐賀県県土整備部道路課)
- 橋梁設計の手引き 第9編 1.5.2 既設橋梁の耐荷力の照査(令和元年7月、愛知県建設部道路建設課)
- 既設橋梁の耐荷力照査実施要領(案)(平成8年3月、(財)道路保全技術センター)
鉄筋コンクリート橋の補修補強工法選定
いくつかの道路管理者が公表している設計要領等に示されている、鉄筋コンクリート橋の劣化損傷に対する補修工法や補強工法の選定パターンを下表に示してあります。 下表にある補修工法や補強工法がどのようなものであるかは、『RC橋、RC部材の補修補修事例』に示してあります。
地方整備局 | 自治体 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
東北 1) | 中国 3) | 四国 4) | 福島県 6) | 山梨県 7) | 静岡県 8) | 愛知県 9) | 佐賀県 10) | |
ひびわれ補修工法 (表面処理工法、注入工法、充填工法) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
表面保護工法 (表面被覆工法、表面含浸工法) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
断面修復工法 (左官工法、モルタル注入工法、吹付け工法) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
剥落防止工法 | 〇 | 〇 | ||||||
連続繊維シート接着工法 | 〇 | 〇 | 〇 | |||||
鋼板接着工法 | 〇 | 〇 | 〇 | |||||
外ケーブル工法等 | 〇 | 〇 | 〇 | |||||
構造系の変更 | 〇 | 〇 | 〇 | |||||
電気化学的防食工法 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
橋梁の補修補強の積算
「国土交通省土木工事積算基準」に、下表の歩掛りが定められています。 また、表に「○」がある工種は施工パッケージに、「□」がある工種は市場単価になっています。
工種 | 適用 | |
---|---|---|
床版補強工 | ||
鋼板接着(注入)工法 | 既設橋梁RC 床版の補強に鋼板接着(注入工法),増桁架設,上向き作業による炭素繊維接着(1 橋当りの補強対象面積50m2 以上)を行う場合に適用する。 | |
増桁架設工法 | ||
炭素繊維接着工法 | ||
橋梁補強工 | ||
橋梁補強工(鋼板巻立て) | RC 橋脚(既設の鉄筋コンクリート橋脚)の補強に鋼板巻立てを行う場合に適用する。 | 〇 |
橋梁補強工(コンクリート巻立て) | RC 橋脚(既設の鉄筋コンクリート橋脚)の補強用コンクリート巻立て工を行う場合に適用する。 | 〇 |
橋梁補修工 | ||
橋梁補修工(ひび割れ補修工(充てん工法)) | 橋梁のひび割れ補修における1 橋当りの充てん作業(ひび割れ延長300m 以下)に適用する。 | |
橋梁補修工(ひび割れ補修工(低圧注入工法)) | 橋梁のひび割れ補修における1 橋当りの低圧注入作業(ひび割れ延長300m 以下,注入圧力0.4MPa 以下)を行う場合に適用する。 | |
橋梁補修工(断面修復工(左官工法)) | 橋梁の断面修復における1 橋当りの左官作業(体積1.5m3 以下)に適用する。 | |
橋梁補修工(表面被覆工(塗装工法)) | 橋梁補修のコンクリート面の表面被覆工(塗装工法)における1 橋当りの塗装作業(仕上げ面積2,000m2 以下)に適用する。ただし,新設時の塗装には適用しない。 | |
市場単価 | ||
橋面防水工 | 市場単価方式による橋面防水工に適用する。 | □ |
1) 東北地方における道路橋の維持・補修の手引き(案)(H29.8版)
東北地方における道路橋の維持・補修の手引き(案)【参考資料編】(東北地方整備局 道路施設の老朽化対策)
2) 設計要領(道路編) 第9章 橋梁 7 橋梁補修・補強設計(令和4年4月、北陸地方整備局)
3) 土木工事設計マニュアル 第3編 第9章 第2節 橋梁の維持修繕(令和6年度版、中国地方整備局)
4) 設計便覧(道路編) 第18章 主要構造物維持補修対策(四国地方整備局)
5) 土木工事設計要領 第4章 維持修繕 6 橋梁の維持補修(平成28年4月、九州地方整備局)
6) 福島県橋梁補修調査設計要領(案)(平成25年3月、福島県土木部道路管理課 マニュアル・実施要領)
7) 土木工事設計マニュアル道路編Ⅱ(橋梁)第4編 既設橋梁の補修・補強(R3.4、山梨県道路基準等)
8) 橋梁補修マニュアル(平成27年度改訂)(平成28年3月、静岡県交通基盤部技術管理課)
9) 橋梁設計の手引き第9編 橋梁保全(令和元年7月、愛知県建設部道路建設課)
10) 佐賀県橋梁補修・補強マニュアル(案)(平成27年5月、佐賀県県土整備部道路課)