工事施行命令、原因者負担金

 交通事故でガードレールを損傷したときや、荷崩れで特別な清掃などが必要となったときなどは、原因者に復旧工事や清掃をさせたり、道路管理者が工事や清掃をしてその費用を原因者に請求します。

工事施行命令、原因者負担金の概要

 交通事故で道路施設が壊れたときは、その原因となった事故を起こした人に直して貰っています。 このようなケースの道路法の扱いを紹介します。

 道路法に「他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持」の扱いが定められています。 これは、具体的には、次のようなものです 1)

  • 交通事故で損傷したガードレール等の復旧工事
  • 大量の油漏れや荷崩れによる積荷散乱のために特別に行う清掃
  • 水道管の漏水によって破損した道路の復旧工事

 このような工事や維持が必要となったときは、次のいずれかの方法で対応します。

  • 原因者にその工事や維持を行わせる。 → 「工事施行命令・原因者工事」
  • 道路管理者が工事や維持を行って、原因者にその費用を請求する。 → 「原因者負担金」

 どちらの方法で工事や維持をするかは、道路管理者が復旧の緊急性や施工の難易度などを勘案して決めます。

 この「工事施行命令・原因者工事」や「原因者負担金」の仕組みは、次のような「他の工事により必要を生じた道路に関する工事」でも、同様に扱われます 1)

  • 堤防の嵩上工事に伴う橋の改築工事や取付道路の嵩上工事
  • ダム建設工事により水没する道路の代替道路の建設工事

工事施行命令、原因者工事

 道路法第22条第1項に次の定めがあります道路法 第22条

道路法 (昭和27年6月10日法律第180号)
  • (工事原因者に対する工事施行命令等)
  • 第二十二条第一項 道路管理者は、道路に関する工事以外の工事(以下「他の工事」という。)により必要を生じた道路に関する工事又は道路を損傷し、若しくは汚損した行為若しくは道路の補強、拡幅その他道路の構造の現状を変更する必要を生じさせた行為(以下「他の行為」という。)により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持を当該工事の執行者又は行為者に施行させることができる

 この規定に基づいて原因者に工事や維持をさせることを、「工事施行命令」とか「原因者工事」と言っています。

 原因者工事の施行命令を出せるのは、原因者が工事や維持を施行しても道路管理に支障を及ぼすおそれがない場合に限られます。 そのため、交通事故の復旧などでは、命令する相手を保険会社などに限っている道路管理者が多いようです。

 原因者が復旧を迅速に行わないとき、実務上は、工事施行命令の取り消しを通知し、道路管理者が復旧を行って原因者負担金を請求する場合が多いようです。 法律上は、原因者が工事施行命令に従わないときは、道路管理者は行政代執行ができます。 この場合、監督処分を経る必要はなく、それに要した費用は行政代執行法の規定で徴収します 1)

原因者負担金

 道路法第58条第1項に次の定めがあります道路法 第58条

道路法 (昭和27年6月10日法律第180号)
  • 原因者負担金
  • 第五十八条第一項 道路管理者は、他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については、その必要を生じた限度において、他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一部を負担させるものとする。

 この規定に基づいて、道路管理者が維持業者などを使って工事や維持をして、その工事費などを原因者に請求することを「原因者負担金」と言います。

 例えば、緊急に復旧する必要がある場合や、交通量が非常に多い幹線道路で施工の難易度が高い場合などでは、道路管理者が自ら工事や維持を行い、その費用を原因者負担金として原因者に請求します。

強制徴収

 原因者負担金をはじめとする道路管理者が課す各種の負担金や占用料などは、国税滞納処分の例により強制徴収ができるため道路法 第73条、原因者負担金を支払わない人の預貯金などを差し押さえることができます。