首都高速道路の大規模更新や整備

 首都高速道路の大規模更新として日本橋区間地下化事業などが行われています。

日本橋区間地下化事業と関連事業

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日本橋区間地下化事業と関連事業

図表出典〕東京都都市整備局HP

 高速都心環状線の神田橋ジャンクションから江戸橋ジャンクションまでの区間で日本橋区間地下化事業が行われています。

 江戸橋ジャンクションの渋滞対策として高速都心環状線同士の接続をなくすため、その代替ルートとなる高速八重洲線の改築新京橋連結路の整備が行われています。 新京橋連結路の整備で交通機能が低下する東京高速道路会社線は廃止されました。

 

日本橋区間地下化事業

 高速都心環状線の神田橋ジャンクションから江戸橋ジャンクションまでの1.8kmの区間は昭和38年(1963)に開通した高架橋です。 鋼桁の疲労き裂やコンクリート床版のひび割れなど多数の損傷が発生しているため大規模更新が必要です。 また、日本橋上空の高架をなくしたいという要望もあるなか、周辺の再開発計画地の地下の活用も見込まれました 1)

 令和元年(2019)に地下化に向けての都市計画変更や特例的環境影響評価が行われ 2) 3) 、新たな高速都心環状線は神田橋ジャンクションから既設の八重洲線を活用して地下に入り、1.1kmのトンネルで日本橋などをくぐり、江戸橋ジャンクションで高速6号向島線の高架に接続します。 令和2年(2020)に事業の許認可を得て、令和3年(2021)には呉服橋出入口や江戸橋出入口が廃止されるなど、事業が進められています。

高速八重洲線の改築

 下記の事業で高速八重洲線の造り替えが必要になるため、令和7年(2025)4月から10年程度、高速八重洲線は通行止めになっています 1)

  • 日本橋区間地下化事業に伴い、神田橋ジャンクションが地下化事業の範囲に入り、地下に新たなジャンクションが設けられる。
  • 新京橋連結路の整備に伴い、接続部の工事が必要となる。
  • 東京高速道路の廃止に伴い、西銀座ジャンクションが不用となる。

東京高速道路会社線の廃止

 江戸橋ジャンクションの渋滞対策として、日本橋区間地下化事業で高速都心環状線同士の接続をなくして、高速都心環状線を通っていた環状方向の交通は高速八重洲線経由に転換されます。

 普通車は高速八重洲線から東京高速道路会社線を経て高速都心環状線に戻れますが、東京高速道路会社線は大型車に対応していませんでした。 大型車交通の環状機能の確保について検討された結果、東京高速道路会社線の改良が困難なため、新たに新京橋連結路が設けられることとなりました 1) 2)

 新京橋連結路が設けられると東京高速道路会社線の自動車専用道路としての役割が大きく低下するため、歩行者中心の空間として再生することとなり 3) 、令和7年(2025)4月に廃止されました。

新京橋連結路の整備

 江戸橋ジャンクションの渋滞対策として、日本橋区間地下化事業で高速都心環状線同士の接続がなくなるため、環状方向の交通を代替する新京橋連絡路が新たに設けられます 1)

 新京橋連絡路は東京高速道路会社線の地下に位置するトンネル構造の延長1.1kmの道路で、往復2車線で設計速度は40km/hです。 令和5年(2023)に都市計画変更が行われ 2) 、令和6年(2024)に事業化されています。

銀座・京橋出入口付近(築地川区間)の更新

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上部空間の活用イメージ

出典〕東京都都市計画局HP

 高速都心環状線の京橋出口から京橋ジャンクションや新富町出口、銀座出入口を経て汐留トンネルの手前までの1.5kmは築地川区間として大規模更新がされています。 この区間は江戸時代の運河に雨水や下水を流していたところに掘割構造で造られ、昭和37年(1962)に開通しました 1) 。 擁壁のコンクリートの劣化が著しく、車道内には橋脚が残っていたりします 2)

 新京橋連結路や高速晴海線との接続を見据えてこれらを更新するとともに 3) 、一部区間では蓋掛けがされ上部空間が活用されます 4) 5)

高速晴海線延伸部

 高速晴海線の晴海出入口から高速都心環状線までの区間は事業化はされていないものの都市計画決定はされています。 新京橋連結路と高速都心環状線の接続に伴い既計画の高速晴海線との接続が困難になるため 1) 、新京橋連結路と連続したルートの検討などが行われています 2) 3)

大規模更新・大規模修繕

 平成25年(2013)に予防保全が道路法に定められ、平成26年(2014)の道路整備特別措置法等の改正で道路の主要構造の取替や全面的な補修に必要な費用も償還の対象になりました 1) 2) 3)

 首都高速道路では既述の竹橋・江戸橋ジャンクション付近(日本橋区間)と銀座・京橋出入口付近(築地川区間)の2箇所と、後述の東品川桟橋・鮫洲埋立部、高速大師橋、池尻・三軒茶屋出入口付近の3箇所の大規模更新の事業許可を平成26年(2014)に受けました。 羽田トンネル付近の大規模更新と湾岸線荒川湾岸橋他の大規模修繕の事業許可を令和6年(2024)に受けて大規模更新や大規模修繕を進めています 4) 5) 6)

1号羽田線 東品川桟橋・鮫洲埋立部更新

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現在の工事ステップ(東品川桟橋部)

出典〕首都高速道路株式会社HP

 高速1号羽田線の八潮連絡路合流点の前後の京浜運河上の1.9kmの区間で東品川桟橋・鮫洲埋立部の大規模更新がされています。

 この区間は昭和38年(1963)に開通していて、東品川桟橋では海水による腐食で鉄筋コンクリートに損傷が多数発生し、鮫洲埋立部では鋼矢板護岸の腐食による路面陥没等も生じています 1)

 この区間の造り替えは、上り線を迂回路に切り替えて(2017)海水面から離れた高さに更新し、下り線を新設の上り線に切り替えて(2020)更新する手順で行われます 2)

1号羽田線 羽田トンネル付近の更新

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断面図

出典〕東京都都市整備局HP

 高速1号羽田線の延長0.3kmの羽田トンネルが大規模更新されています。 羽田トンネルは昭和39年(1964)に開通した海底トンネルで、海水の漏水による鉄筋消失などが生じています。

 現在停止中の羽田可動橋のルートに3車線の上り線の高架を造って交通を迂回させたうえで、トンネルの中床版の取り替えやトンネル躯体の補強などが行われます 1) 2) 3)

1号羽田線 高速大師橋の更新

 高速神奈川1号横羽線が多摩川を渡る延長0.3kmの高速大師橋が大規模更新されています。 高速大師橋は昭和43年(1968)に開通した橋梁で、川の流れを阻害しないよう橋脚の間隔を広げ上部工を軽量化したため、橋がたわみやすく疲労き裂が多く発生しています。

 新設橋は荷重が大きいため橋脚から作り直し、令和5年(2023)に2週間の通行止めをして既設橋と新設橋を河川上で移動する架け替えをし、引き続き旧橋の解体などが行われています 1) 2)

3号渋谷線 池尻・三軒茶屋出入口付近の更新

 高速3号渋谷線の池尻出入口付近から三軒茶屋出入口付近までの延長1.5km区間で大規模更新がされています。 この区間は昭和46年(1971)に開通していて、RC床版に多数のひび割れが生じています。

 この区間では地下構造物の補強が行われていて、床版への取り換えとともに渋滞対策として付加車線の増設や池尻入口と出口の位置を入れ替えが行われます 1) 2)

湾岸線 荒川湾岸橋の大規模修繕

 高速湾岸線が荒川を渡る延長0.84kmの荒川湾岸橋が大規模修繕されています。

 荒川湾岸橋は昭和53年(1978)に開通した橋梁で、塗装仕様が古いため大規模な塗膜剥離や鋼材の腐食が急激に進行しているため、新たに高耐久な塗装などが行われています 1) 2) 3)

新規路線の整備

 首都高速道路では既述の新京橋連結路のほか、新大宮上尾道路の整備が行われています。

新大宮上尾道路の整備

 新大宮上尾道路は、高速埼玉大宮線の与野ジャンクションから北上して鴻巣市に至る自動車専用道路で、このうち、与野ジャンクションから上尾市の上尾南出入口(仮称)までの延長約8.0kmが平成28年度(2016)に事業化されています。

 事業延長8kmのうち、南側の国道17号新大宮バイパスの上に高架で造られる延長5kmの区間では、現況幅員36.5mを42.5mに拡幅して、北側の国道17号上尾道路の上に高架で造られる延長3kmの区間では現況幅員57mのなかに造られます。 事業は舗装や設備とジャンクション部、出入口は首都高速道路株式会社が、一般部の用地や高架工事は国土交通省が分担して進めています 1) 2) 3)